塩仕立てのねぎま、カリサクの唐揚げ、その下にはソースと練りからしの添えられたチキンカツ、左下には甘辛濃い目の軟骨入りつくね、弾力を楽しめる厚さの良質の蒲鉾、柔らかい下地のじゃが芋煮、昆布佃煮、酸味が嬉しい紅生姜、あえてのカリ梅、そして箸で持ち上げやすい厚さに敷かれた雑味のない白飯。およそ弁当にはどうしても二軍が生じてしまうものだが、この特製弁当には脇役がいない。焼き鳥唐揚げチキンカツつくねはそもそも単品の出場でも弁当が成立するほどの主役級である。ここにじゃが芋と紅かまぼこのみでも十二分に手厚いところ、さらに飯の友としてカリ梅、昆布佃煮、紅生姜という意外にして強力な組み合わせが投入される。昆布の佃煮は飯の友として当然優秀であるが、カリ梅と紅生姜が鶏中心の脂気と圧の強いおかず布陣に対し非常に良い仕事をする。カリ梅は、歯ごたえ、どこか奥ゆかしいさっぱり感、白飯の点景、いずれにおいても秀逸である。一方の紅生姜はダイレクトな酸味と爽やかさ、小回りの利く繊切という形態に加え、その鮮やかな紅色で彩枠を一手に担ってくれる。
弁当左手は茶色の階調に紅蒲鉾一枚で軽やかさを演出、右手の白飯には点景としては一見地味な鶯色のカリ梅、それを裏切るように左隅に対比の強い黒の佃煮と紅の生姜を配し、全体風景として実に美しい。昆布佃煮、紅生姜、紅蒲鉾の下にはバランを敷き色移りを避ける美学も心憎い。
完成した弁当である。
900円。