歌
「切手ある?」お前の声がかえりくる文箱探るその右肩に駅前でお前に似た子見つけたよだからどうとはいわないけども父方は仏教母方キリスト教受付多くて大変だろなお葬儀に分骨せねばならんのだがやりたくなくて先延べしてるうまいこと遺さず連れ帰られたの…
明日荼毘に付す逃げられぬ粛々と死が現実に近づいてくる花を買い佳い菓子を買い服選ぶどれをお前の棺に入れよう旅のよな火葬の前にアマゾンで納骨袋なるものを知るわたくしはわるいこだから年老いた母の同行疎ましく思う連れ行くはその時の手間連れなくば悔…
アキレスと亀の如くに小刻みにお前の際に辿りつけない 何かがが何かが何かがひたひたと逃れようなく寄せ来るようでそれそこの地面俄かに落ち窪みあれが冥道避けて歩けよ私は思ったよりかはだいじょぶで思われてるよりだいじょばないですキャラメルの空き箱の…
お前がいなくなったということをお前に連絡しようとしてた何も手につかないというわけでない顔に出さぬが平気でもない頼むから平時のうちに帰ってよも少ししたら探せないかも悲しむは早すぎるかも楽しむは不謹慎かも置き所なしなにかこう神々しいにまみれた…
風なんてお呼びじゃねえわ肉体を持てるお前が帰って来いよ元気かと問うひとありていずれとも見当つかず黙し微笑む鳴きかわす春の恋歌遠ざかり神経節がむき出しになる賽の河原で石積むように徳積めど鬼も崩しに来ないのだものお手本がないので何が正解かわか…
お母さんは温かい肉を食べてるよお前はまだ温かい肉ですか人の気も知らんでお前どこにいる飢えてませんか死んでませんか携帯の充電位したまえよお前の唯一の標というにもしかお前がただただ無事に帰っても放っといてやるから早く帰れよお母さんはここにいま…
警察も探しています連絡の取れぬお前はどこにいますか 行方不明のお前がいまだ見つからない心臓が知らない間に腐食している 雨に濡れ歩けなくなり弱りゆくそんなお前はどこにもいない 一昨日と変わらず君を迎えるよ君ほど君を気にしてないよ 屹度君はどこか…
心から願うことありて初詣御籤は引かず畏み白さく かさぶたの裏に育む薄紅の表皮のような記憶のやけど 片恋があなたのところにお使いに行ったのですがその後お元気?
柔らかい白詰草をはがされて次に植えるはレンゲにしよか 己が身が何に惑うか知るものか知らんのならば鎮まって居よ 十年を科博の夜に潜み隠れ爪弾くように物を知りたい 暗闇に本読めぬなら歌紡げ探り続けよ文字掻き寄せよ 毎日はいつか終わると知りながら今…