安さに釣られてイナダの切り身を買ってしまった。半身2枚で225円である。相変わらず鈴木水産はふざけている。
家に帰ってからいろいろ検索したら、
- イナダは美味しくない
- 血なまぐさい
- ぱさぱさしてる
- 脂がのってないので味の濃い照焼や油を補える唐揚げなどがおすすめ
などという、こう、そこはかとなく不安になる文言ばかり出てきた。
えっ君鰤の弟なのに体脂肪少ないの?お兄さんあんなにてやてや脂じみてるのに。
腹案としては
- 塩焼き
- 幽庵焼き
- あっ三浦大根残ってるから鰤大根もいいな
等があったのだが雲行きが怪しくなってきた。
君、そんなにぱっさぱさなのかい?
悩んでいても仕方ない、私には今目の前のこの子を美味しく頂く責務がある。
幽庵焼きならよさそうだと思ったが、30分後に食べたい場合、漬け込み時間を必要とする幽庵焼きは難しい。今日の料理のレシピなんかだとさぁ、24時間漬けこめとか書いてあるんだよォ?
もういい。
塩味食べたい。
塩でいこう。
養殖ぶりの脂が大分くどいと感じる派だから案外イナダ行けるかもしれん。
でも極端にぱさぱさだったら悲しくなるだろうなぁ。
じゃあオイチイ油で焼いちゃえばいいじゃん。胡麻油とか。
というわけで、イナダの半身に十字の包丁を入れ、やや強めに塩を振ってペーパータオルでくるんで冷蔵庫で30分。ウォックパンにごま油を引いて熱したところで皮目からイナダを入れて油が回るように揺すった後弱中火で3分。返して同じようにちょっと揺すってまた3分。
皿に移してお行儀悪いのは承知、とるものもとりあえず一口いただいた。
なんだ。
美味いではないか。
もし塩だけでいまひとつであったら、フライパンに戻して味醂と醤油でにわか照焼にするか、柚子胡椒をうまいこと散らして風味でごまかすか、などと考えておったのだが。
杞憂であった。
油できっちり焼いたせいか特に皮がうまくなっている。身が分厚い奥まったところはなるほど確かに脂気のない白身という具合だがそれほど気にならない。それより驚いたのは胡麻油の濃さがイナダに全く馴染んでいる点だ。うちでは九鬼の純正胡麻油こいくちを使っておりそれはそれは容赦のないごゆい胡麻油なんであるが、その濃さがまるで感じられない。やはり胡麻油で焼いて正解だったのだ。胡麻油を吸ってこの丁度良さであれば、ただの塩焼きでは素っ気なかっただろう。
というわけで、唐揚げは工程が多くて油の始末が面倒くさい、照焼もいいが今日は塩焼き気分という方、疑似塩焼きを堪能できるイナダの胡麻油焼きをお勧めするぜ!