【材料】
子持ち鮎
塩
【必要な道具】
ペーパータオル
アルミホイル
【あると望ましい道具】
グリル用焼き物メッシュシート
指先トング
【作り方】
- グリルにメッシュシートを敷いておく
- グリルを弱火で温めておく
- 鮎はよく洗ってぬめりをとる
- 水洗いでぬめりがとれなかったらペーパータオルで拭い倒す
- ペーパータオルでヒレの間までよく拭いて水けを取る
- ヒレを丁寧に開き化粧塩する
- 全体に塩する
- グリルに入れ弱火で3分焼き焼き目を付ける
- 指先トングで裏返して弱火3分焼き焼き目を付ける
- 焼き目が付いたところでアルミホイルで覆ってそのまま1時間じんわり焼く
- 箸を入れると中の卵からほっこり湯気が立つ絶品子持ち鮎の塩焼きの完成だぁーッッッ!
【このレシピのいきさつ】
鈴木水産でみっちみちに卵を抱いた子持ち鮎が250円だったのである。興奮した私はすぐに身請けし帰宅してすぐネットで美味しい焼き方を検索した。まず頼りにしたのが特選男の料理。こちらでは鮎の下処理が動画で非常にわかりやすく解説されている。ぬめりを取ることが重要、糞を押し出すとうまいとな。しかし炭火焼推奨だったので設備のない私は魚焼きグリルバージョンを探した。すると天下のHONDA様が家庭用コンロでの鮎の美味しい焼き方を指南してくださっているではないか!
もはや勝利は目の前である。
早速台所に立ちまずは鮎のぽんぽんをそっと押して糞を、糞を…。
卵出てきたァァァァァ! 卵らめぇぇぇ! 出てきちゃらめぇぇぇ!
こりゃいかん。糞が出ずに卵が出た。この工程は省こう。糞が残っててもしゃーない。というかこの状態だともう糞とかぽんぽんに存在しないのではないか?
さてそれでは気を取り直して洗う。ぬめる。塩つけて洗う。胸鰭のあたりのぬめりとれなぁい!もういい!乾いたペーパータオルでいくらでも挑戦してやる!
ぬめりがとれたところで水洗いし、改めてペーパータオルで風呂上がりの赤子を拭いてやるようにヒレを開いて水けを拭う。串打ちは確実に失敗しそうなので省き、そのまま化粧塩、身への塩は控えめでよいというので岩塩をがりがりやる。この辺は特選男の料理さんの動画を参考にした。
グリルに寝かしてやる。
さぁ、HONDA様の言う通りまずは5分弱火で焼いてキツネ色にこんがらせたところで焼き目をつけるとするかぁ!
弱火5分。
既に焦げ目がついておられる。
これはいかん。HONDA流の手順で進めると卵生焼けか皮が焦げ焦げかどちらかの未来しか見えない。ええと、アルミホイルだ。アルミホイルで覆えばおそらく遠火の弱火を実現できる!とりあえず裏面も直火弱火で5分焼いたあと、アルミホイルで覆って弱火で長時間責めて、囲炉裏端にほうったらかしてあるあの鮎の塩焼き感を目指すのだ!
しかしアルミの効果がどの程度かわからないため最初は5分で様子を見に行った。狙い通り焦げは進んでいない。これなら中にじっくり火を入れることが可能だ。
そのまま弱火でじりじりと1時間。
満を持して、鮎をグリルから取り出し、皿に盛り付けた。
さてここからどうアプローチすべきか。
所謂背骨を抜く方法も模索したが、みっちり卵が詰まっているので適用可能か判断できなかった。
普通に行こう。
腹に箸を入れると、皮と卵膜が破れ、細かい卵が露わになると同時に、良く火の入った澄んだ香りの湯気が立ち上った。
ああ、私は、これを、これをこそ食べたかったのだ。
それにしてもこの卵の抱え様はどうだろう。背中の肉すらほとんどない。胸元から尾びれまで、腹一杯にみっちりと卵が入っている。妊娠後期を思い出した。足元が見えぬほど腹が膨らみ、息も苦しかったあの頃。私は確かに孕んでいた。お前も確かに孕んでいるのだなぁ。
食べ進むうちにほろほろとこぼれた卵が彼女の腹腔にたまる。背中の薄い肉も、微かに背骨についた透明な脂も、項の肉も、何もかも丁寧に、残さず大事にいただいた。
これまでは百貨店の催事で冷えたものを1000円くらいで贖っていた子持ち鮎の塩焼き。これが家で賄えるとしたら大変な得である。
今回唯一の後悔があるとすれば、二尾買ってこなかったくらいだ。
来年の私よ、子持ち鮎を見かけたら遠慮せず一人あて二尾買うのだぞ。
美味いものだぞ。