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観ましたね？
では感想戦だ。
いやーもっと早く見るべきだったわ白雪姫。なんかもうさぁ、今のディズニー多様性だのなんだので方向性見失ってるけどさぁ、白雪姫で何の衒いもない多様性の極致に既に到達してるじゃん！LGBTQに配慮した子供向きとはいいがたいややこしい設定の新作やめてもうこれお出ししとけばいいんじゃないのぉ？
（ディズニーの思想方面についてはノーコメントで）
そもそも白雪姫さぁ、しょっぱなからお姫様なのにボロ着せられてお城の外階段の掃除させられてるんですよ。観たらすぐに（あ、これルッキズム至上主義の女王のはからいだな）ってわかる。でも一生懸命掃除してる。んでその境遇を嘆くでもなく水汲みに行って願いが叶う井戸に向かって健気にお歌うたってたらさぁ、通りがかった王子様が歌声に惹かれて塀越えてやってきて白雪姫に一目ぼれするわけですよ。吃驚した白雪姫はお城の中に隠れちゃうんだけど、それ見て初めて、あ、このひとほんとにお姫様だったんだなって思うぐらいボロ着せられてる。そんで白雪姫も王子様が気になって二階の窓から顔出してなんかいい雰囲気になって二人の思いをつなぐように小鳥さんが口づけの橋渡しをしちゃったりするわけですよ。一方で女王様は魔法の鏡に世界で一番の美人を諮るという日課を粛々とこなしていたところ（こう書くと随分寂しい日課である）白雪姫の方が美しいって話が出ちゃった。自分より美しい存在があるなどというのは不自然な状態である、その原因は取り除かなくてはならないと率直に思った女王様は、白雪姫に外に花を摘みに行かせてどさくさにまぎれて殺してその心臓を持ってこいっていう命令を手下に下すんですよ。えっマジでってなるけどやんなかったら殺されちゃうから手下もしゃーなくて白雪姫のとこ行くわけですよ。白雪姫はお掃除じゃないからボロじゃない正装っぽいドレスに丈の短いマントをまとって出かけて巣からおっこっちゃった小鳥を慰めたり励ましたりしてるわけですよ。それを見たら女王の手下もあかーんこんなん殺れへんわーってなって白雪姫にあんた命狙われてるからとっとと逃げなさいというわけですよ。そんで白雪姫は後からわかることだけど七つの山と七つの谷を渡った先の小人たちの暮らすところまでたどり着くんですがここの演出がすごくて映画館で見た当時の子どもたちはおっかなかったろーなー。んで白雪姫さすがに心折れてうち伏して泣いちゃったのを心配したウサギさんが覗きに来たのにびっくりして声を上げたらウサギさん驚いて逃げちゃった。そんなときあなただったらどうしますか。こっちゃえらい目に合ってきたんじゃ脅かすなボケェって返しませんか（そこまで言わない）。白雪姫はね、ウサギを気遣うんですよ。驚かすつもりじゃなかったのよごめんなさい、私大変な目にあってきたの、でもいつまでも落ち込んでちゃだめよね、こんなときどうすればいいのかしら。そんでまぁひとしきりミュージカった後白雪姫がどこか眠れるところはないかしらって森の動物たちに聞いたら動物さんたちが小人の家に導いてくれるわけですよ。そこが小人の家だなんて知らない白雪姫は、調度が全部小さく部屋が全く掃除されていないのを見て、親を亡くした小さい子供が住んでいるんじゃないかと思って動物たちと一緒に掃除して溜まったお皿洗ってスープ作って食卓整えたところでくたびれて二階で寝ちゃうわけですよ。あんたお姫様なのにどんだけ働かされてたんだってレベルの家事スキルですよ。んで鉱山でダイヤモンドを採掘していた小人たちが帰って来て家の異変に気付いて二階覗きに行ったらなんかかわいこちゃんが寝てるわけですよ。話聞いたら命からがら逃げてきたお姫様。えらいこっちゃですよ。んで白雪姫起きてまず何をしたと思う？小人たちの名前を当てるんです。ベッドに書いてあった一度見ただけの名前から推理して全員あてる。すごい、このお姫様賢い。なおこのお名前当ての過程で白雪姫はしゃべらない小人についてもくしゃみをしすぎる属性と均等に受け入れる。ああんダイバーシティ。そんで身の上話の後家事をするからここに置いてと自分から願い出た白雪姫、噴いてるお鍋を火から遠ざけて、さぁご飯というところで何と言ったと思いますか。
洗ったの？
すごい。当たり前だけどすごい。言えるかそこでその台詞。
小人たちは部屋の様子通り衛生観念が欠落していたようで食事前に何を洗えって言われてるのかわからない。で白雪姫は手を出しなさいという。手を見て、黒い、汚い、外で手を洗ってこない限りごはんはあげません。
ママー！（錯乱）
やべぇよ白雪姫ママみがすごいよ！家事万能で7つの山を踏破する体力があってさらにママだよ！完璧超人かよ！
そこからもうすごいねちねちした衛生キャンペーンが始まる。7人の小人全員がみんなでどこにしまってたのか石鹸まで持ち出して全員おそろいの禿げ頭から顔から手から一所懸命洗う。絶対これお子様啓発目的。一つは子どもにほんとに手洗いを啓発するため、もう一つは「お子様の衛生観念の涵養に！」という親への訴求のため。今だってばいきんまんが自殺覚悟で手を洗うじゃん。ああいうやつ。面白いだけじゃなくてためになるらしいからうちの子連れてってやろうっていう親の動機づけに超有効。子供向け映画は親が連れてかないとみてもらえないからねー。
そんでお食事の後はみんなで音楽会。おうちにはパイプオルガンも弦楽器も打楽器もある。一人の小人のガチ声楽は必聴。ついでに言うとこのおうち、階段の一段一段にフクロウの彫り物があったりロンデル窓だったり流石背景美術も超一流。一通り歌ったり踊ったりした後今度は小人たちが白雪姫に頼む。何か素敵なお話を聞かせて。
それで白雪姫は一度だけ会った王子様への思慕を明かす。いつか私を見つけて、そしたらお城に戻って幸せに暮らしたい。ものすごい切実。何しろ命狙われて逃げてきたわけだからね。そんなん聞いたら全力で守らなきゃいかんという気持ちにもなろう。玉の輿じゃない。ただ本来の場所に戻りたいだけ。
そのころ魔女…じゃなかった女王がまた日課をこなして白雪姫が生きていたことを知りやっぱ人任せはあかんと思い立ち、「死んだように眠り続ける」薬をこしらえる。ここですごい描写がある。女王の地下室に設けられている牢屋で水差しに格子越しに手を伸ばしたまま朽ちた骸骨。その描写、そのたった一画面の描写で、ああ、この女王は、美への執着から心迷った人ではない、本当に、心から残忍な、罰されてしかるべき人だということが伝わる。すごいディズニー。
女王はほんとにこの人元に戻れるんかいなという思い切った容貌に変化して粗末な舟をこぎ小人の家を目指す。小人たちは仕事に行く前に女王は黒魔女だからくれぐれも気を付けるようにと白雪姫に注意する。そしたら白雪姫何したと思います？
小人の！
禿げ頭に！
優しく！
キスを！
しやがった！
ウワー大平等！博愛！ダイバーシティーーーーーー！（錯乱）
だってねあなた、いくら泊めてくれたからって昨日会ったばかりのおっさんの禿げ頭にキスできますか？無理！私できない！
ウワー！
それでなくてもこの白雪姫、寝る前に神様に親切にしてくれたお友達の安全を神様に祈っちゃうんですよ！自分のことじゃなくて！お友達優先！そんでもってあんだけ白雪姫にきつくあたってた怒りんぼと仲良くなれますようにって祈っちゃうんですよ！
ああーもう慈愛が過ぎる！もはや仏！地蔵菩薩－－－－－－－！
絶対お前女がらみでなんかあっただろという怒りんぼですらおでこを磨いて列に参戦。わかるー。
そんでまぁ。
小人の出勤後、パイを作ってる白雪姫のところに女王が訪ねてくるわけですけども。
ちょっとここで脱線。
パイって上にきしめんみたいな生地がクロス状にかかってるじゃないですか。あれただの飾りだと思ってたんだけど違うのね。パイ生地を型に被せたときの縁の切り落としを使ってたのね。勉強になったわー。
んでこの魔女やり方がコスイ。
女王から白雪姫を守ろうとした小動物に脅かされた際に心の臓を痛めたふりして家に上がり込んだ後、このリンゴは願いが叶うリンゴなんだよ、と白雪姫を唆す。心に願いがあるだろう。願いを言って。さぁ、その願いが消えないうちに一口。
転がった林檎。なげだされた白雪姫の白い手。動物たちは小人たちを呼びに行ったが間に合わず、家を出た魔女と鉢合わせた小人たちは魔女を山頂まで追い詰める。雨の中岩山を登りきるなんてすげぇ根性と体力だよ魔女。ちょっと尊敬するわ。
そんで明らかに強度の足りない木を梃子にして大岩を小人たちに落とそうとして雷に打たれ山から落ちる魔女。魔女が小人の家に近づくとき、その様子をにやにやしながら見ていた二羽のハゲワシが満を持して落ちた魔女に向かって舞い降りる。ハゲワシが予兆していたのは白雪姫ではなく魔女の死だったのである。このくだり、雷に打たれてからハゲワシが舞い降りるまでの深い無音が恐ろしい。
場面は転換して。
オルガンの聖歌、横たわる白雪姫を囲んで小人たちが言葉もなく泣いている。動物たちは涙を流すことはないが見守っている。小人たちは白雪姫を埋葬できず金とガラスでできた棺に入れたというナレーション。
場面が転換して。
森の中、射し込んできた光に照らされている白雪姫の棺。最初に動物たちが棺の周りに花を供え、次に小人たちが棺を開け白雪姫の胸元に花束を置き変わらぬ姿に悲嘆に暮れる。そこに棺に入った美しい娘のうわさを聞いた王子がやってきてその顔を見て懐かしい人であることを見てとって口づけし悲しみに首を垂れる。小人たちも、ああ、この人が白雪姫が言っていた思い人の王子なのだな、しかしもう白雪姫は目覚めることはない、と肩を落とす。動物たちも首を垂れる。
そこで！
白雪姫が！
伸びをしながら！
目を！
覚ます！
気配に顔をあげ喜ぶ王子！喜ぶ小人！喜ぶ動物たち！そのまま王子は白雪姫を抱き上げ馬に載せる。そこで王子は驚くべき行動をとった！
続きはCMの後で！
じゃない！
なんと王子は何もかも見ていたかのように小人を白雪姫に向けて抱き上げ、白雪姫は小人たちの禿げ頭にキスするのである！
こ、こ、こ、この、
ハゲー！
ちがーう！
何で知っとんねん王子ー！なんで自分が探し求めてた思い人がおっさんの禿げ頭にキスするの受け入れてんねんむしろ推奨しとんねん王子ー！世話になってたという噂をきいとったんかー！何もかもまるっとお見通しかー！お前も慈愛の塊かー！
そらお前ら幸せになるわー！超絶家事スキルと体力と慈愛と負けない心の持ち主の白雪姫と探し求めてた思い人の行動パターンを瞬時に見抜いて感謝を伝える手伝いをするノブレスハートの持ち主の王子！この人たちが幸せにならんかったら誰が幸せになるんじゃー！末永く幸せになれ－！
というわけで
ディズニーすげぇな。
もう新作いいから旧作流せよ。いや新作見てないけど。
そして手塚治虫先生はすごいディズニーリスペクト。手塚治虫先生のマンガのリズムの全ては白雪姫に詰まっていると言っても過言ではない（過言）。これからあの漫画が仕上がるのはわかるがアニメが振るわないのはなぜなんだぜ。手塚治虫のマンガは確かにディズニーと手塚治虫のハイブリッドなのになぜアニメはああなのだ。いやそんな大して見てないけど手塚プロのアニメってなんかこう…出汁とった後の鰹節みたいでさぁ…。
