即興厨房

大船市場で野菜を大量に買い込んでええ感じのお総菜を一週間分作ってはブログに記録する人です。器は骨董屋でこつこつ集めたぐい飲みやお猪口です。美術展、本、たまの旅行も記事にします。好きな動物はチー付与のどんぐりです。

しゃしん

全然割り切ってないですよ。うちの母が額装した下の子の写真置いてったんですよ。なんてことをするんですか。そんなことをしたら、まるでうちのこが、

死 ん で し ま っ た み た い じ ゃ な い で す か。

確かに私は以前あなたに渡した写りの良い下の子の写真の焼き増しを頼みました。あなたの家に話をしに行った時、あなたが祭壇に飾っていた写真を示して、この写真いいでしょう、これを遺影にしたらいいと思ってるんだけどどう?というから、そうだね、多分あの子の最近の写真は派手な格好のが多いだろうから、高校の頃のだけどいいかもしれないね、と答えました。あなたが焼き増しいる?と聞くから、折角の好意だと思ってお願いしました。A5を5枚。元夫に渡す分とかまぁ何か必要になるかもなので。でも

額 装 な ん て 頼 ん で な い で し ょ う。

ひ と こ と も。

 

なんてことをしてくれるんですか。

いいですか。

私はね。

そ ん な 風 に 仕 立 て ら れ た あ の 子 の 写 真 を 見 る の が つ ら い ん で す よ!

私がこういう心持ちであることをわかってくれ察してくれなんて微塵も思ってません。あなたたちはあの子の写真の周りにカトリック関係の偶像を配した祭壇を設けて悲しくなったら祈っていると言っていましたね。私はそれを心から尊重します。私はキリスト教を離れましたが、上の子は洗礼を受け、下の子も望んでいました。それはとても喜ばしいことだと思っています。信じるものがあった方がいい人もいると思います。

でも

私 に は 私 の 流 儀 が あ る ん で す よ。

祭壇なんていらんのです。いつもの日常があればいいんです。あの子の部屋を片づけているのは、要らないものを廃棄して、二人の子どものものをあわせて整えてきれいに掃除して、何だお母さんこんなもの取っておいたんだというような懐かしい実家感のある居心地のいい空間を構築するためです。それでいいんです。写真なんてどうするんです?子供部屋に本人の写真飾りますか?飾らないでしょうが。

ましてや額装なんて。白の額装なんて。

あったら表向きに置くしかないじゃないですか。後ろを向かせたらかわいそうじゃないですか。そんなの、私がそれがあることで、それがその、下の子のいた部屋にあることで、用事があって部屋にいくと目に入る、そのことだけで、どれほど苦しいか、どれほどつらいか、

言 わ な く て は わ か っ て い た だ け ま せ ん か。

あなたの家に行った時私があなたが大切にしている祭壇を打ち壊したらどうしますか?まぁ私はそんなことできやしませんが(キリスト殿はなさいましたが)。それでね、あなたがなさったのは実はそういうことなんです。私はただ以前とかわらぬ空間を保ちたかった。居心地の良い空間を、柔らかい空間を作れればそれでよかったのに。

なぜ私の、ただの静謐を、かけがえのない静謐を、打ち壊すような真似をするのですか。

高齢の母親を、良かれと思っての母親の行為を拒絶するなんて、とんでもない人でなしです。わかっています母には悪意のかけらもない。でも、こういうとき、そうっとしておいてほしいときに、押し被せられた善意は奈落のように苦しいのです。いくらでも謗ってください。しかしながらこればかりはどうにも我慢ならん。

自分でもなぜこんなにと思うほどの怒りを覚えています。八つ当たり?結構!

 

人でなしといくらでも謗っていい。

謗っていいから。

どうか私の空間をあのころのままに保たせてください。

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翌日母に電話して言い過ぎたことを謝り倒しました。遺影の形をしたものを置いておくと私の心がもげることを伝え、しばらくの間は父母の住まいに飾ってもらうことにしました。