鎌倉のジラソーレで美しいコップを買った。
冷茶を入れると映えるので愛用し始めたところしずくが垂れる。
コースターが必要である。
高校の頃に鎌倉の骨董屋で買ったコースターを出してみたが、どうも合わない。
同じような風趣のものをメルカリに探しに行ったところ、好みの品を見つけた。
こういうのが3つで780円で出ているからメルカリは恐ろしいのだ。
金属部分に錆が浮いているが、それもまた味わいなので早速購入した。
届いた商品は出品写真より美しく見えた。コップにも実にそぐう。
大変満足して、どれ、少しくらい磨いてやろうと思い、スポンジに磨き粉をつけ、金属部分の、それも外側だけを注意深く磨き始めた。
もとより錆を取りきるつもりはない。ただ地金が少しきれいになればいい。そのくらいの気持ちで磨き、そろそろと思って水で流したところ、裏側の異変に気付いた。
内部に水が入っているのである。
よく見ると、これはいわゆるガラス絵付けのコースターではなく、千代紙を二枚のガラスの間に封じたもののようだった。
えらいことをした。
せっかく美しい状態で引き渡してくださったものを、届いたその日に損ねてしまったか。
このまま中の紙に不可逆な染みが生じてしまったら、私は出品者の方になんとお詫びすればよいか。
そんな風に思いつつも、しかしガラス絵コースターと書いてあったようにも思われて、おそるおそる出品ページを改めた。
やはりガラス絵となっている。
さればこの扱いは私の罪ではない。
とはいえ、私の罪であろうがなかろうが、出品者から引き継いだ以上、同じ状態で次に引き渡す義務はある。
内側に入った水を、紙をなるたけ損ねず、また黴も生やさず乾かすにはどうすればよいか。
冷蔵庫に保管することを思いついた。
冷蔵庫は常に乾燥しており、また低温なので黴がはやる恐れもないだろう。
私は、表の水気を布巾でそうっとぬぐった後、冷蔵庫に入れた。
果たしてこの措置は正解だったようで、3日ほどで裏側のしみはきれいになくなり、受け取ったときとおなじように一面がまっさらの空色に戻った。
大事に使います。