おそらく長崎の筆頭料亭である坂本屋。
以前長崎に住んでいた人に坂本屋と呼べば、法事などで使うとっておきとの声が返ってくる。
ただ、こちらの坂本屋、値段もさることながら、予約が二名からというのが、一人旅にはどうにも!ほんっとうにどうにも!越えられない壁である。
しかし坂本屋は、本店に参戦できない人のために、規模はめちゃくちゃ縮小されるが、駅弁「角煮めし」という救済措置を設けているので、そちらで坂本屋欲を満たすこととした。
角煮めしは長崎駅のファミマで午前九時前後の入荷、坂本屋の従業員さんが保冷箱を手ずから担いで搬入してくださる。
なんと850円という懐に優しいお値段である。
左上から、生姜酢漬け、マンゴー寒天、干し大根醤油漬け。
干し大根醤油漬けは普通のツボ漬けと異なり、甘みが強く、また独特の香気がある。別の店で頂いたきゅうりの芋焼酎漬けに似ていたが気のせいかもしれない。
マンゴー寒天はデザート的な位置か。
生姜酢漬けは特筆すべき点はない。
さて角煮めし。
これが、うまい。
めしには牛蒡、椎茸、人参を炊き込み、錦糸卵ぱらりとかけてある。角煮をどけたその下には、思いのほか大量のきざみ乾海苔がかかっている。
じんわりとしみる味付きご飯だが、これ単品で頗るうまいという類のものではない。といってこれが白飯では興ざめで、角煮を邪魔しない、角煮とあわせてそのうまさを底上げする、そういう類のめしである。もちろんとりどりの具材は食感がたのしく、錦糸卵の彩も美しい。
そして角煮。
全体がくたくたとただ柔らかすぎるわけではない、しっかりとばら肉の繊維質を残しながら、しかもその繊維質同士の結合は十分にほどいてあるので、食べ応えがあり、歯ざわりよく、それでいて全く硬さを感じない。味付けは、甘さ、醤油の風味ともぎりぎりのところで過剰を抑えている。嗚呼これだ、これが私が目指すべき理想の角煮だ、東坡肉だ。
また見ての通り、この手の「きわめて手のかかる看板惣菜」が載っている弁当にありがちな、「看板惣菜の量が物足りない」ということがない。「十分に角煮を食べたぞ!」と満足できる角煮の量である。ヘタをしたら本店の卓袱で出てくる量より多いんではないかな?(行ったこともないのに夢を見すぎである)
もし長崎にお越しになって、諸事情で坂本屋さんに行けない人は、ぜひこの駅弁でその味わいの片鱗を味わってほしい。心からオススメできる美味い品である。
なおファミマでは予約は受けていないとのこと。なんかこう、うまい事手に入れるといいよ!入荷前に来ちゃった場合、出島メッセ長崎方面に出たところにベンチがあるからそこで待つといいよ!