前日の天気予報では、雨になる、雪が降る、果ては電車が止まるだのと言われていたが、家を出るころには青空が雲間から覗くほどになっていた。
ランチの店に迷ったが乗り換え駅の金沢八景にある筋のよさそうな中華料理で頂くことにした。
鳳城
鳳城は金沢八景駅東口を出て横須賀街道を右手に進んだところにある小さな中華料理屋である。
google mapで見たパイコー丼や牛バラ肉のあんかけ丼が頗る旨そうで、美術館併設のアクアマーレと大分迷った挙句こちらにした。
店に入ると壁にぐるりと本格的な中華料理の献立が貼られている。とてもよさそうだ。
今日の定食、定食、丼とあるが、今回は丼で。
牛肉丼と牛バラ肉丼の区別がつかなかったので店員さんに聞いたところ、通常メニューの写真を示してくれた。アッ私が食べたかったのはこちらの牛バラ肉丼である!ワンタンスープのセットご飯少なめで注文したところ
あああああこれだよこれ!これ!君に会いに来たんだ!八角が仄かに香るよく煮込まれた柔らかい醤油味、ぐだってない小松菜、ゆるいあんに肩まで浸かるご飯!こういううちで作れないものを頂くのが外食の醍醐味なのだ。
で、ワンタンスープだが。
えっ?ワンタンスープって…えっ?
所謂「中華スープ」が盛り付けられている小椀でなく小ラーメンサイズの小丼に丹念に手作りされたであろう5枚ひだの薄く大きいワンタンが4枚のびのびと揺蕩うている。舌触りがつるんつるんでサイコー。
ここに
えーっと、わかりますかね、所謂中華料理屋の「細いザーサイを薄く切ったやつ」ではない分厚いザーサイなんですよ。歯ごたえがしっかりしててなんか風味がよい。出来合いですか?どっかで買えますか?って聞きたくなったくらいうまい。
こちらの杏仁豆腐、シロップが恐ろしくうまい。砂糖じゃなくなんか果糖っぽい爽やかな甘さ。そしてなんかよくわかんないけど美味しい果物が入ってる。梨のシロップ漬けっぽかったけどわかんない。
幸先が良すぎる。
パイコー丼も、入ってきた常連さんが単品で注文してたホイコーローもおいしそうだった。これで950円とは金沢八景民がうらやましいぜ!
泥牛庵
とてつもなく満足して店を出て、来しなに見かけて気になった寺泥牛庵に向かう。
撫でて良かったらしい牛の銅像。撫でていいって書いてないし手の跡もないしでわからんので撫でて良いっていう札を立てたほうがいいと思うよ!同型の牛さんは本堂引き戸を開けた正面にも鎮座しておった。
エッシャーのでんぐりでんぐりみのあるベンチ。
作りが渋い石灯籠。
何の生き物かわからんがすごく三角刀な彫り物。
何の生き物かわからんがすごく苔むした彫り物。
実はこの寺に足を止めたのはこの庚申塔がどうにも気になったからである。
三猿とのことだが柔らかい堆積岩が削れた結果何とも諸星大二郎的な風味となり味わい深い。
鳳月堂
美術館で頂くおやつを買いに駅前の鳳月堂へ。柚子庵の晩鐘最中と桜羊羹を勇んで買い求めたのだが、あれだ、横須賀美術館のロッカーに桜羊羹忘れちゃった…。美味しそうだったのに…。
横須賀美術館 日本の巨大ロボット群像展
金沢八景から馬堀海岸に行き馬堀海岸からバスで横須賀美術館へ。バス停は県道209号沿いを右に行ったところにある。渡ったら逆方向行っちゃうので気を付けるように。
横須賀美術館はプリツカー賞を受賞したばかりの山本理顕先生設計なのだから外観くらい撮ってきなさいよ…。(気が逸ってそれどころじゃなかった)
というわけで日本の巨大ロボット群像である。入り口入ったら機動歩兵がお出迎え。
もういきなりこんな仕掛けお出しされたらね、テンチョンもマックスになるってもんですよ!
この展覧会で横須賀美術館が体感させたかったのは「巨大ロボットのスケール」であろう。何しろ展覧会の第一章が「日本各地で”現実化”した巨大ロボットたち」である(英語解説の"Chapter 1"という表記を見てブレイバーンの甘いささやきを想起したのは内緒だ)。ガンダム、スコープドッグ、イングラム、鉄人28号、マクロスFのメサイアが各地で「実物大」で設置されたという事実を示すことで初手から鑑賞者を巨大ロボットが実在する時空に誘おうとしているのだ。なお図録には各地の巨大ロボットの現場写真が掲載されているが展示はされていなかった。図録を買って本当によかった…。
痺れるウェザリング。
Chapter 2は実写とアニメを縦横無尽に駆け巡った横山光輝先生の鉄人28号にかかる展示である。図録によれば1963年1月に鉄腕アトムが日本初のテレビアニメ化、その9か月後に横山光輝先生の鉄人28号がテレビアニメ化される。鉄人28号のルーツはフランケンシュタイン博士の怪物だそうだが、その概念はさらにユダヤ教のゴーレムの伝承に遡ることができる。巨大な人型を操縦して闘うという巨大ロボットの系譜は、鉄人28号に端を発するとこの展覧会は定義したのである。
写真がポンコツですみません。でも、わくわくするよね。
Chapter 3は「搭乗、強化、合体、変形--70年代巨大ロボットの想像力」。こちらの「巨大ロボットを巨大に描くーー1970年代編」は後に出てくる1990年代とあわせ横須賀美術館がこの展覧会のために宮武一貴先生に依頼した描きおろし。
こんなこともあろうかと望遠レンズを持ってきておいてよかったぜ。ロボットの手って色っぽいよねぇ…。
かっこよければこまけぇこたぁいいんだよ!!という熱いパトスを感じさせる奇想天外な疑似科学の奔流がたまらない。大人が本気で遊ぶとこうなるというお手本であろう。
こういうのも外さずお出ししてくださる。
Chapter 4は「ロボットが現実に「いる」世界ーー『機動戦士ガンダム』」である。
ここでやってくれたのがこの展示。
えっ?
わっ。
おわぁぁぁ!
というわけで横須賀美術館はその建物の作りを生かして身長18メートルのガンダムを惜しみなく体感させてくださった。ビームライフルでっかーい。
で、図録によると、この機動戦士ガンダム、日本サンライズ企画部の山浦栄二氏にSFを教えてほしいといわれた高千穂遥先生が貸した文庫『宇宙の戦士』に端を発するとのこと。『宇宙の戦士』には入り口にあったような機動歩兵が出てくる。
このパワードスーツが『宇宙戦闘団ガンボーイ』『機動鋼人ガンボイ』『機動戦士ガンダム』と推移し、パワードスーツのデザインは大河原先生と安彦先生により突撃攻撃型機動歩兵(ガンダム原形)との重砲兵型機動歩兵(ガンキャノン原形)の2軸で展開する中、最終的に富野先生によりモビルスーツという呼称を与えられるに至ったとのことである。
ここではセル画による巨大ロボット感表現についての展示もなされていた。手前の人物とロボットのセル画の間に既知のスケールの木々のBOOKを挟むことでその大きさを疑似体感させるという技法をシャドウボックスのように展示している。
Chapter 5は「「大きさ」から巨大ロボットのリアリティを実感する」である。
ルパン三世「ドロボーは平和を愛す」に宮崎駿が輝樹務名義で参加した際のロボット兵の実物大展示や
みんな大好き装甲騎兵ボトムズのスコープドッグの実物大展示があった。
大河原先生のスコープドッグのモックアップなんて胸熱しかない。
Chapter 6は「ロボットの「内部メカ」、1980年以降の大発展」である。
だんだん記事に息切れしてきたので文章が淡白になるがお許しいただきたい。
こういうドキがムネムネするやつである。点検パネルとか痺れるねぇ。
Chapter 7は「荒唐無稽な巨大ロボットの帰還ーーアニメ本来の楽しさとは?」と題し、ロボットデザインの枯渇、マニア向けの加熱から70年代のスーパーロボットへの原点回帰が語られる。
こちらが先の描きおろしの1990年代版。
かんたん銃の汎用性。
往年のタツ〇コメカ変形!
FINAL CHAPTERは「巨大ロボットについて語るーー60年の旅路の終わりに」の展示である。といって、展示は
こんなで、むしろその真髄は図録にある。展示は抄録と言った態で、図録に加藤直之先生、押井守先生、中島かずき先生、岩坂照之先生、小俣貴之さんへのごっつりしたインタビューが掲載されているのである。
図録が現地でしか買えないということでそこそこえぐい値段でメルカリで売買されているが、なるほどこの図録は、末尾の6ページにわたるロボットアニメ年表という労作はじめ、作品集として楽しめるだけでなく資料としても一級であろう。来館時は図録が売り切れで希望者に無料で発送とあったところ帰ろうという5時くらいに入荷していたので1冊買い求めた。それとモリモリ撮った写真をもとにこの記事を書いている。
素晴らしい展覧会であった。
さて。
横須賀美術館と言えば屋上である。
ペントハウスには眺望と船の解説がある。
正面に見えるのは新日本製鐵君津製造所の冨津火力発電所、左手にはなんと第一海堡、第二海堡も見える。
潜水艦とおるの?マジで?
長閑に海ばかり眺めておったのだが、ふと裏の崖を見て違和感を覚えた。
上と左は綺麗な地層だけど、正面おかしくね?
なんか直角になってない?
というわけであまりに気持ち悪くて家に帰って調べたところ、平塚市博物館の「「相模川の生い立ちを探る会」 活動の記録 第235回 2012年 9月1日 横須賀市鴨居港・観音崎」という記事を見つけた。
今回は堆積学のご専門である横須賀市自然・人文博物館の柴田健一郎先生にご案内いただき、観音崎の三浦層群逗子層・池子層を観察しました。まず、観音崎バスターミナルで三浦層群の逗子層と池子層の堆積物について説明いただきました。観音崎付近にみられる三浦層群は本州弧の前弧海盆で堆積したと考えられている地層で、主に泥岩からなる逗子層(600万年~400 万年前)は水深2000~3000 mの深海で、主に凝灰質な砂質泥岩からなる池子層(400~250 万年前)の下部は水深1000 m以上の深海で、池子層の上部は水深150~300 mの比較的浅い海で、それぞれ堆積したと考えられているそうです。
(中略)
横須賀美術館裏では、池子層の大露頭を観察しました。向かって右側では地層がほぼ水平に見えるのに対し、左側では地層がほぼ垂直に立っていました。不思議な地層の成因を考えて本日の巡検を終えました。
結局なぜ地層が垂直になっているかは記事からはわからなかったが、非常に奇妙だという印象と垂直になっているという見立ては誤っていなかったので満足した。
晩鐘最中は
味には特筆すべき点はないが形がよくできているので土産に良いのではないかな。