食と農の博物館は大根踊りで有名な東京農業大学の運営する博物館である。
常設展の主なコンテンツは、
・農大の歴史
・二母性マウス「かぐや」
・鶏の剥製
・酒器及び酒造り関連
・古民家
である。
また、一般財団法人進化生物学研究所の熱帯温室バイオリウムが併設されている。
訪問時の特別展は、『学祖群像』、東京農大の三人の学祖、榎本武揚、横井時敬、田中義男をとりあげたものであった。
入口で迎えてくださった某貴族の色紙。この色紙があるだけで期待度が百倍くらいになる。
実はここの展示で一番コーフンしたのがこのウイングレスの鶏である。これまでなんかうすぼんやりと都市伝説程度に認識していた鶏が実在しておりしかもイギリスで1951年に突然変異個体として発見され系統を確立してから東農大で系統維持されているということに偉い衝撃を覚えた。君、実在してたんかい…。
確かに手羽先がない。すげぇな。超感動。
鶏の野生種的に展示されていた剥製だが題箋の写真撮るの忘れた。スイマセン
鑑賞種の矮鶏。美しいなー。
海外勢も超ロック。
お次は酒器。
鶴の卵を半分に切り分け内側に金箔を置き外を金蒔絵で仕立てた杯。鶴の卵で酒を飲むと長生きするのだそうだ。
かっぽ酒。宮崎県高千穂の農民が野良仕事の休み中に飲むのに使った酒器。竹筒に生酒を入れ木に立てかけて下の芝を燃やすと竹筒が焼けて竹の香が酒に移るというもの。
大体想像は付くけどどうやって飲んだのかいまいちわからんのでネットで調べてみたが不見当。
同じ発想のものは台湾にもあるのであった。
あと卒業生が作ってるお酒の展示もあった。これ超かっこいいよね。
バイオリウムにはキツネザルとケヅメリクガメとマダガスカルを中心とした植物コレクションの展示がある。
和名臥牛。かっこいい!
和名神刀。ヤバイ。
光を多く取り入れるために上部が透明になっている植物、オブツーサ。一度実物を見たかったので大変ありがたかった。
題箋より要約:ホホバの種子からは-50度でも凍らず超高圧に耐えるワックスが採れる。最も重要な用途はジェット機のエンジンオイル。これまで鯨油が使われていたがホホバオイルが見つかったことでアメリカが捕鯨反対に回ったという。流石アメリカさん利に敏いわぁ。
二母性とはなんのこっちゃと思ったら卵子の遺伝子情報だけから生まれたマウスとのこと。SFネタだなぁ。
樹齢1400年ってぇと…飛鳥時代からの年輪である。
蚕体放大模型。技術がすごい。日本の博物学の父と呼ばれる田中芳男の養蚕関連の蒐集品。
お昼は博物館の前の通りに出ていたSPICE屋台モクメでカレー2種盛とおかずセットのモクメミール950円とマサラチャイ150円を頂いた。
ご飯を大分減らしてもらっている。
こちら緑豆とレッドキドニーのダルカレーとゴロッと豚肩ロースのジンジャーカレー。どっちもうまい。ジーラライスにはレモンをかけるよう案内される。おかずはスパイス煮卵、ジャガイモのスパイス蒸し煮、ほうれん草のスパイス炒め。
当日が農大受験日でとても生協で弁当を調達できる雰囲気ではなく、博物館併設のeggも新型コロナの影響で休業中だったもんで、この屋台があって本当に助かった。
自家製ジンジャーシロップが頗るうまいマサラチャイ。
おなかもくちくなったので1時間以内に食べることが条件の搾りたてのモンブランを販売しているキャトルセゾン洋菓子店に向かった。食べログではイートイン可能とあったが新型コロナの影響で小さなテーブルは閉鎖されていた。しかし今度があるかわからないことを伝えとりあえず持ち帰りを頼むと勢いに負けたのかそれとも不憫に思ってくださったのか店員さんが近所に公園があることを教えて下さった。ではそちらでいただきますというと店員さんはスプーンやら使い捨ておしぼりやらを付けてくだすった。申し訳ないやらありがたいやら。
搾りたてのモンブランクリームというのはそれはそれは美味いのだがそれ以上になんともねっとりとした食感があることに感銘を受けた。中央には生クリームが据えてある。そして特筆すべきは底に敷いてあるビスキュイである。おそろしく軽く、カラメルのような香ばしい甘さがあり、もろい。私は外でいただいた関係上クリームを食べた後ビスキュイをつまんでガシガシ齧ったが、これ、フォークで食べたら全部崩れるのではないか。しかしうまい。今まで食べたモンブランの中で間違いなく一等うまく、そしてこれからの生涯で何回モンブランを食べるかわからんが長く一等にとどまり続けるだろう。公園では若い二人がバトミントンに興じている。その羽根つきの音を聞きながら恐ろしく繊細なビスキュイとモンブランクリームのねっとりした奥行きを味わう。なんと贅沢なおやつだろうか。
それから世田谷文学館に向かった。
道すがら藤巻食品粕谷店を見つけなんかどっかで見たぞ食べとかないと後悔するぞという天啓に駆られ小さい厚揚げと絹ごし豆腐を買う。絹ごし豆腐は湯豆腐にして九州醤油とカボスで頂いた。うまい。厚揚げは南瓜とブナシメジと甘目にたきあわせた。うまい。
更にみちすがら、天政という揚げ物やを見つけてうまそうな予感を得た。夕食用にメンチカツと椎茸海老詰めとスコッチエッグを買った。椎茸のエビ詰めがえらく美味くて驚愕した。
世田谷文学館は美しい博物館であった。
自分は谷口ジローは坊ちゃんの時代と神々の山領と孤独のグルメしか読んだことがなく、何故こういう文学調の人が久住昌行さんと組んだのだろうと思っていた。しかし初期作品の劇画はハードボイルドとコメディを内包していた。もともと親和性はあったのだ。
すごくジャン=ポール・ベルモンドっぽいわー。
矢作さんとの共作。トーン使わないドライでハードな作風。
この歩くひとのシリーズ、すごくいい。
小泉八雲を主役とした作品の下書きと原稿の比較。作品名記録してませんすみません。
孤独のグルメの食べ物もおいしそうだったが、オール読物の平松洋子さんのエッセイの挿絵、この豚丼はどうだ。トーンが、トーンがおかしいじゃないか。あんまりじゃないか。こんなシズル感、かみしめるとはじけてくるだろう脂身、柔らかくも武骨な肉質、照り照りと甘辛なたれまで、あんまりにもうまさが想起されるじゃないか。白と黒なのに。ただの白と黒なのに。
この原画を拝めただけで私はこの展覧会に来たかいがあったと思ったのである。