即興厨房

大船市場で野菜を大量に買い込んでええ感じのお総菜を一週間分作ってはブログに記録する人です。器は骨董屋でこつこつ集めたぐい飲みやお猪口です。美術展、本、たまの旅行も記事にします。好きな動物はチー付与のどんぐりです。

【読書覚書】池上俊一(2022).『歴史学の作法』.東京大学出版会.

読んだ動機

思想の偏りが強めの方の歴史観に反駁しようとしたが学生時代の無勉強が祟り至らなかった。日本史再学習の必要性を覚えスタディサプリで高校日本史の学び直しをしようと思い立ち、どうせなら世界史からと思い山川出版社の世界史Bと用語集、図録を買い求め勉強し始めた。しかし村山秀太郎先生の授業は初学者にはあまりに高度で全くわからずわかりやすさを求めて家庭教師のTry iTの動画を見たが今度は簡素に過ぎて不満が募った。迷走の果てにOCWの「歴史とは何か」を見たら非常に面白く歴史への視座が開けた。私はもっと俯瞰的視座から教科書を肉付けするような授業を受けたかったのだ。改めて村山秀太郎先生に立ち戻り、図録を見ながらルーズリーフに授業内容をまとめ、それから教科書と用語集を読むようにしたら、すっかり楽しめるようになっていて嬉しくなった。ありがとう村山先生。一方で歴史学そのものにも関心を覚えたため、図書館のお気に入りリストに入れておいたこの本をなかなか順番が回ってこない予約本を待つ間に読むことにした。

 

得られたもの

史記、論文、教科書、歴史小説など、歴史を扱っている様々な著作について、それらがいかにその時代に入手しうる史料に規定されているか、そして歴史学者がどのようにそれらの境界を越え新しい歴史へのまなざしを獲得しようとしてきたかという動的な流れについてほんのちょっぴり分かったような気がした。当たり前であるが歴史に対する視座も政治的事件やそれによって変化する世界情勢に影響されて時代とともに大いに変容するし、調査方法、分析方法、史料の収集方法も技術と共に先鋭・複雑化していくのだ。そして私が面白く読んでいた『詐欺とペテンの大百科』『世界の七不思議』『銃・病原菌・鉄』『お母さんは忙しくなるばかり』なども実のところ全体史と分類される歴史書の一であったことを知った。なんだ自分は存外歴史書を読んでいたのではないか。ならなおさらそれらを改めて一つの流れに束ね直さなければならないと思って愈々熱心に村山先生の授業を視聴している。

 

この本をお勧めしたい読み手

歴史を扱っている著作を読む人。今あなたが読んでいる著作が歴史学の流れの中でどのような位置にあるのかがわかってお得である。