即興厨房

大船市場で野菜を大量に買い込んでええ感じのお総菜を一週間分作ってはブログに記録する人です。器は骨董屋でこつこつ集めたぐい飲みやお猪口です。美術展、本、たまの旅行も記事にします。好きな動物はチー付与のどんぐりです。

【暫定版】近親者が富士の樹海で亡くなると後処理が割と大変な件について または富士の樹海での自死者の火葬までの流れ

DNA鑑定結果が出たので、火葬に行くことになった。

 

富士の樹海で近親者が自死した場合、現地での火葬までが必須イベント、後は各人の宗教に従って対応することになると考えられるため、火葬までの流れを記録しておこうと思う。

1.警察に行方不明届を出す

近親者が消息を断った場合、当事者の居住地近くの警察に行方不明届を出すことになる。このとき自死をにおわせるような発言や書置きがあった場合、警察は当事者を特異行方不明者として全国指名手配する。全国指名手配がなされると全国の警察に当事者の写真や情報が共有され、スマホの位置情報などを起点とした調査がなされる。なのでこの時何かしら捜索の参考になりそうな情報があれば警察に提供する。

 

2.勤め先の上司に情報を共有する

急な休みに備えて職場に情報共有しておく。見つかったら嬉しいだけで困ることはないので早めに情報共有しておいた方がよい。私の場合は周りを心配させたくないのとそもそも未確定なので直属の上司にのみ伝えた。といってもまだこの段階では上司も事務面はともかくとして感情面はどう対応していいのかわからない様子であった。実は私もなんですよ、と言いたくなった。

 

3.携帯電話に連絡を取ったり銀行の通帳を記帳したりして当事者の観測を試みる

現代に生きている人間にとって、金は血液、携帯電話は神経。携帯電話の電池が生きている間は希望が持てるが電池の充電が切れると\(^o^)/オワタ感の強度が高くなる。電源が切れて充電されなくなった時、私は当事者の死を覚悟した。

 

4.警察から捜査状況の説明を受ける

スマホの最後の位置情報から警察が捜査した結果が情報共有される。初動とかめちゃめちゃ頑張ってくれる。ハコヅメとか読むと警察のありがたさかけがえのなさが身に染みる。一方で当事者は見つからない。どうにもならん。なお行方不明者への対応については届出者への定期連絡などを定めた施行規則がある。読むとちょっと気晴らしになるかもしれない。なおこの結果についても上司には情報共有する。警察の担当者の方に、時間休をとって署に説明を聞きに行くと申し出たところ、逆に職場近くに来てくださり、さらに上司は人に聞かれたくないだろうからと会議室をこっそりとってくださった。皆様の親切には感謝してもしきれない。

 

5.現地に探しに行きたくなる

電池が充電されなくなり警察の初動もむなしい結果に終わると非常に茫漠とした心持になり何かせねばならん気になる。母が現地に行くと言い出したのもこのころである。しかし富士の樹海など素人が行っても確実に二重遭難を生むだけである。私は行方不明届を出した翌日心の深淵に足をとられながらネットを検索し見つけた富士山の樹海探索のライブ配信者の方にDMで同行希望を依頼したところ快く引き受けて下さった。返信が来た時に覚えた「まだ自分にも何かできることがある」という光射すような気持ちは今でも忘れられない。何かしたいのだ。

 

6.「らしき」遺体が発見される

ライブ配信者の方によると見つかっても身元不明のままの遺体はままあるそうである。当事者は身分証明書の入ったポーチを首から下げていたため所管の富士吉田警察署から私に連絡が入った。樹海に行く前に見つかったのはあえて親孝行と言っておこう。樹海探索のために新幹線を予約したことを当日まで忘れていて鉄道会社からのリマインダーをフィッシングメールかと思ったのは内緒だ。ごめんなさいJR東日本。もちろんライブ配信者の方には遺体が発見されたので同行を辞退する旨をいち早く連絡した。

 

5.警察署にDNA鑑定のための検体を引き渡す

大変確度の高い遺体と聞けばとにかくそば近くに行きたくなるものだ。連絡を受けてすぐ上司に休みの許可を取り翌日電車を乗り継いで所管の警察署に行った。なお富士吉田警察署は富士山のそば近くにあり、季節にもよるだろうがトレッキング目的の外国人観光客が佃煮にするほど乗車している。元夫はゴールデンウィークのど真ん中に行くはめになり電車は座れず宿もドミトリーだったそうだ。こんなときでもご当地物への執着が消えず、吉田うどん、地元のうまい和菓子屋などを事前チェックしていったのは秘密だ。吉田うどんは腰があってうまいものであった。警察署では担当者が部屋をとって発見時の遠景や身に着けていたものの写真を見せてくれる。発見者は山菜をとりに来た老婦人であったとのこと、何かお礼をしたいなぁ、遺失物とすると一割になるけど当事者の一割はどう算定すればいいのかなぁなどとよくわからないことを考えるなどした(考えただけ)。翔り立つように発見された場所に行きたい気持ちになったので発見された場所への経路に加え緯度経度も確認した。遺体、特に顔を見たいというだけ言ってみたがやはり止められた。警察が止めるのだからやめておいた方がよいのだろうと思った。人定からお葬儀までの流れを聞いたところ、近隣であれば遺体を霊柩車で運んで葬儀を行ってから火葬コースだが、遠方の場合は富士吉田で火葬を済ませてお骨にして連れ帰るというコースもあるという。警察が見ないことを勧めるような遺体を霊柩車で連れて帰ってもよいことはないだろうから現地火葬コースがよかろうと思った。その後頬の内側の粘膜の細胞をDNA鑑定のために提供した。担当者に対応の礼を言ってから警察のロビーで現地タクシー会社に総当たりしたが、トレッキングシーズンにタクシーを確保できるはずもなかった。後日元夫が発見された場所に確認に行ったところ、車道から比較的近いところであったが緯度経度がわかっても全く特定できなかったとのことである。山育ちの元夫が大変だったというのだから相当であるなと思った。諦めて和菓子屋に寄り空虚を抱えながら和菓子を美味しくいただき、序に神社に寄って待ち人の欄を見ないおみくじを引き、帰路についた。

 

6.DNA鑑定の間に富士吉田の葬儀場に火葬の見積もり、葬儀地の葬儀場に葬式の見積もりをとる

ネット検索で好感を抱いた葬儀場に火葬の見積もりを依頼した。元夫と私の手元供養のために分骨したかったので骨壺の持ち込み料なども確認した。なお火葬のみの場合聖職者の立ち合いや儀式は手配できない。葬儀場の担当者はその点を私が知っており説明を省けたことを相当喜んでいたので、火葬の際儀式を希望する遺族が多く、できないという説得に難航しているだろうことが推察された。通常の葬式の流れを想起してみてほしい。葬式があって火葬があって散会するわけだが、火葬場には聖職者は来なかったはずだ。どうしても儀式をしたいのであれば自分でらしき真似事をすればよいのだ。自分は小さなスピーカーを持っていき広告表示をブロックできるブラウザアプリでyoutubeの讃美歌集を流す予定である。頑張れモバイルバッテリー。骨壺についてはバラエティに富んだデザインのものをアマゾンで入手できる。ただ荷物の軽量化をはかるため現地に持参するのは納骨袋とした。こちらもアマゾンで(以下略)。 葬式は各人によって異なるので省略するが、折角時間をもらったのだから先行事例を一定程度網羅した上で見積もりを依頼し見積書の項目金額をよくよく検分し担当者に存分に相談し身内とよく話しあいながら納得のいく葬儀になるよう詰めるとよろしい。この時の基準は「確認出来ている限りの自死者の希望を第一に、喪主の都合を第二に」とするとよい。喪主以外が「あの子はこうしてほしかったんじゃないかしら」だの言いだすと百家争鳴となり確実にまとまらないルートに突入し喪主が疲弊してろくなことにならない。大切なのは共に悼む場を作ることであるということを忘れず、ただ希望についてはおろそかにせず、最終的に無理筋あるいは喪主の負担が大きくなる場合は断る勇気を大切にしたい。まぁ自死者なので身内+最後の職場の人+彼女さんくらいの葬列者なのでこのようなまとめ方が可能ということは重々承知している。

 

7.DNA鑑定の結果が出たら葬儀社と火葬の日程調整をし手続きに必要な情報を提供する

火葬場は込み合っていることもあるのでDNA鑑定結果が出たら即富士吉田の葬儀社に連絡し日程を調整する。このくらいになるともう精神がやれているので一週間やそこら伸びてもいいだろうという気持ちになる。いやまぁ見つかった週末火葬場に空きがなかったからね、しょうがないよね。死亡届に必要な情報は、当事者の住所氏名居住地本籍地に加えわかる範囲での身長体重、申込者(つまり私だ)の住所氏名電話番号居住地本籍地である。ここでの居住地は住民票の所在地だと考えられる。本籍地は火葬の手続きの際必ず必要になるので早めに確認しておこう。

 

8.火葬ロジを作成する

葬儀場の方に相談したところ、朝9時半に富士吉田警察にたどり着けば遺体引き取りの手続きを手伝って下さり死亡届を出す市役所まで送って下さり手続きを手伝って下さりそのあと火葬場まで送って火葬が終わる16時ごろまで同席?してくださるという。そこからは自分でタクシーを呼んでくださいとのことだった。富士吉田市は土地柄他の自治体の居住者の死亡届も受け付けているそうだ。大変だな富士吉田市…。先にも述べたがとにかく富士山のおひざ元なので宿とタクシーは早めに確保することが肝要である。私は鑑定結果がでる1週間前に「なんとなく」宿を確保しておいたら大当たりであった。いのちだいじにのロジなので屋上に露天風呂のあるホテルの富士山ビューの部屋を確保した。わーい(やけくそ)。宿が決まれば足の確保である。Google先生の協力を得て行きも帰りも比較的移動が短時間となるルートを組むことができた。なおGoogle先生は長距離バスはちょっぴり苦手なようで実際に時刻表に当たったらご提案より条件のいいバスが見つかったりするので何事もよく確認するように。昼ご飯は市役所近くでええ喫茶店を見つけた。晩御飯は同行の母の気力体力が品切れになっているであろうところ、宿の近くに仕出しをやっている非常に良さそうな料亭を見つけたので事前に予約して私が撮りに参る予定である。運がいい。ついでに言うと火葬場の周辺をGoogleMapでチェックしてたら火葬場から歩いて8分程度のところに船津胎内樹形があるのを見つけた。己が腹を痛めた子を荼毘に付す間に母と父の胎内と準えられた洞窟に参じるも一興なので体力気力に余裕があれば詣でる所存である。当日の持ち物としてはハンコが必須とのことだ。あとよくネットで言われてる「死亡届の5枚コピー」も頑張ろうと思う。元夫に分けたお骨は元夫の家系のお墓に入るとのことなので、葬儀担当者には分骨証明書が必要であることもあらかじめ伝えておこう。お棺に入れる副葬品も素材によっては火葬炉を傷める可能性があるため事前確認しておいた方がいい。今回は金属ボタンのついた服、ゴム底の靴も大丈夫とのことだったので、服一式と好きだった食べ物や好きだったキャラクターのぬいぐるみ、プロのカメラマンに撮ってもらって気に入っていた写真などを入れることにした。そうそう、タクシーを手配しておくのも重要だ。火葬終了の見込み時間を葬儀社の担当者に確認して、早めに火葬場に迎えに来てくれるタクシーをおさえておこう。

 

というわけで、近親者が富士の樹海で亡くなったときの大変ポイントとしては

・いつ発見されるかわからず先が見えない

・発見されたらされたでDNA検体を提供する必要がある これ郵送とか対応しているのだろうか…

・一日で引き取り⇢死亡届⇢火葬は可能だが、大変なのでいのちだいじに

・富士山のおひざ元なので宿と足の確保が困難

・全体的にアクセスが難儀

が挙げられる。

一方で、結果論として有利だったポイントとしては

・とにかく時間があるので、葬儀について余裕を取って見積もり検討できる

・骨壺とかもゆっくり選び放題

・せっかくなので富士山見えるホテルとっちゃおうわーい!

等がある。やけくそか。

 

あと行方不明者の遺族あるあるとして

・悲しむタイミングがよくわかんなくなる

というのがあると思う。

一般的な死であれば葬式まで長くても二週間くらいで納まりそうなところ、行方不明から火葬までだけでほぼ2か月。遺体の発見まで2週間でこれである。喪失が薄く長く引き伸ばされてしまうとだんだんなんだかよくわかんなくなってくる。ついでに言うと遺体発見と鑑定結果の連絡はどちらも電車内で受けたので泣けなかった。詮方ない。

なお、死亡のおそれのある行方不明届を出してから1年たつと家裁に失踪宣言を申し立てることができる。失踪宣言を出すと何がいいかというと、もう社会保険料を払わなくてよくなるという点である。役所で確認したわけではないが、生きてる限りはたぶん健康保険料とか年金とか払い続けなくてはならないようで、えぐい。見つかっていなくて、まだ喪失を受け入れられなくて、まだ死亡届なんて出したくなくても、社会保険料とはかりにかけて失踪宣言を出さなくてはならないかもしれないのだ。1年は、見つかっていなかったら、多分、短い。大切な人を社会保険に殺された気分になりそうだ。もう少し何とかならんか。なんとかならんだろうなぁ。

 

というわけで、近親者が富士の樹海で亡くなった際の後処理について粗々記録した。火葬は来週末なので現地状況を反映した修正が入るかもしれない。暫定版である。

 

私自身の話。

今のところ食事は一度も食べられなくなったことはなく、毎週末掃除洗濯をし買い物に行き弁当含む食事はほぼすべて手作り、心調不良で仕事を休んだのも一日という健康優良っぷりである。行方不明の届を出した週明け、ここで休んだら二度と仕事に行けなくなるような気がして気張っていったのがよかったんだろう。強制的な気分転換は、たぶん、とても必要で重要だったのだ。

脳みそに負担の少ない良書と見込まれたので、『GIVE&TAKE 「与える人」こそ成功する時代』を読んだ。読了後、今が読むべき時だったのだと思った。私は自己犠牲型のギバーだった。しかし今や私には、私の死んだ子どもに引き継ぐために、よりよい経験をする責務が発生した。私はこれから、私自身を含む、私に関わる全ての人を幸せにするための代理人として生きていこうと思う。

鬼滅の刃のアニメもサイコーである。

ジュヴァンクマイエルのオテサーネクは、なんでこのタイミングで観ちゃったかな…。

 

かーらーのー

火葬旅行記

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