即興厨房

大船市場で野菜を大量に買い込んでええ感じのお総菜を一週間分作ってはブログに記録する人です。器は骨董屋でこつこつ集めたぐい飲みやお猪口です。美術展、本、たまの旅行も記事にします。好きな動物はチー付与のどんぐりです。

葡萄への心理的ハードルが駄々下がりする下村工業のフルベジぶどうの皮むき器を布教したい

昨今は皮ごと食べられる葡萄がはやっておるが、私は皮をむかないと食べられない巨峰や藤稔やらが大好きである。シャインマスカットは凛としてしゃっきりうまい。しかし自分はこう皮を剥くときに果汁がだばだば出てきてテーブルもびしゃびしゃになりがちで果肉もやや柔弱な芳醇で激甘な葡萄がいい。ただ、そのような葡萄類は皮離れが指のささくれよりもなお悪く、葡萄の穴に爪を立て四方八方から剝き上げてもなぜか尻の部分を中心に小さな破れ傘のように皮が残ってしまうという醜態に至るのが常であった。業を煮やして皮ごといけるシャインマスカットや皮離れの良いデラウェアに流れもしたが、やはりそれは私の愛する果汁だばだば葡萄類を凌駕するものではなかった。テレビでフルベジ葡萄の皮むき器を見た。またネットでも推奨する記事を見つけた。しかし私はどうも買う気にならなかった。たかが葡萄の皮むき器に800円も出すのかい?そんなもん手で剥けばいいんだよ、手で。

そんな風に侮ったまま私はある日欲望に負けて藤稔を買った。腰を据えてちまちまと剝き始める。ようやく一粒剥けて口に放り込む。ああ、これだこれだ。この芳醇だ。前頭葉を直撃する、砂糖よりもなお強烈な糖度、僅かな酸味を従えながら突き抜ける甘味、果汁の頂。

しかしこの感動は長く続かない。めんどくさいからだ。一個剥くのにかかる時間が地味に意欲を削ぎ落す。剥いても剥いても上手にならないところがまた苛立ちを唆す。まとめて剝けばよかろうと思うかもしれないがダメなんだ、それじゃダメなんだ。

剥きたてでないと。

瑞々しい果汁を全身に纏ったままでないと。

私の望む葡萄じゃないんだ。

自分の不器用さと気の短さに嫌気がさした私は、そのとき不意に下村工業のことを思い出した。

買うか。

アマゾンの配達は早く、葡萄の日持ちは想定よりも長い。藤稔が萎びる間もなく人類の英知は到着した。

シンプルな道具だ。紫色の持ち手の両側に丁寧に曲げられた輪状の針金が付いている、たったそれだけの道具だ。あれだけあちこちで推奨されているんだからきっと良い働きをするんだろう。だが、こんなにもシンプルな道具、不器用な私に使いこなせるのだろうか。

解説動画に従い、葡萄の穴から皮と身の間に針金の尖った部分を差し込み、実の丸みに沿ってぐるりとまわす。

引っ掛かりがなくなったところで引くと、輪状の針金にヒスイのように美しい実がつるりと載っているではないか!

僕にもできたよ、お母さん!

いやもうこれすごく楽である。あのささくれと戦う日々はなんだったのかと思う程である。800円が高いだって?ハハッ、そんなこと誰が言ったんだい?人類は一人一つずつ持つべきじゃないかねこんな優れた道具は!

そんなわけで、美味い葡萄が出回る今この季節にこそ、フルベジ葡萄の皮むき器の購入を強く推奨するものである。

なお、アマゾンを見ると佃煮にするほど模倣品があるが、ここは下村工業さんの開発力に貢献するためにも純正品以外の購入を固く禁ずる所存である。

 

でもアマゾンはこの季節だと大体転売価格になっちゃってるからヨドバシカメラものぞいてみてね!定価は税抜きで750円だよ!

 


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