即興厨房

大船市場で野菜を大量に買い込んでええ感じのお総菜を一週間分作ってはブログに記録する人です。器は骨董屋でこつこつ集めたぐい飲みやお猪口です。美術展、本、たまの旅行も記事にします。好きな動物はチー付与のどんぐりです。

葉山散歩

神奈川県立近代美術館の葉山館でカイ・フランクの展示をやっているというので訪ねてみることにした。よく晴れた良い日だった。逗子駅から3番線11・12系統のバスに乗って初秋の葉山を抜けた。美術館についてまず庭を散策する気分になった。一脚にカメラを据え付けそのまま担いで階段を下りる。すすきのような小さな草が群生しているのを見つけ、これを望遠で撮ったら面白かろうと思いついた。

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それから塀のところまで下りて海を眺めた。海には不思議なオブジェがあった。面白いのでそれも撮ることにした。

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このオブジェから浜に向かって垂直に線を伸ばしたところに釣り人がいた。何を釣っているのかはわからないが、しばらく糸を垂らしていたと思ったらふいに後ろに置いた荷物に向いてしきりに何か小さな作業をする。それが終わるとまた海に糸を垂らしてじっとしている。釣りの良さが釣果にあるのかそれとも他にあるのかよくはわからないが、きっとああいう時間の過ごし方にもあるのだろうと思った。

左手にはぱらぱらと人が見えた。大抵が二人連れだ。江戸を終わったころから葉山はきっと行楽地で、こんなように風光を楽しむ人を迎えていたのだろう。空のほの白さも水面の輝きも海の青さも成熟した山の緑も何もかも丁度良いように思われた。

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いろいろと気が済んで、ようやく美術展を見る気になった。自分が使っている一脚は美術館のロッカーにぴったり入るお利口さんである。遠近両用から単焦点近視用の眼鏡にかけかえ単眼鏡と色鉛筆の入ったがま口を首にかけ手帳を持ってようよう準備ができたので窓口に行ってチケットを買った。最初は「音をみる、色をきく」という収蔵品で組み立てた展覧会で、Max Klingerの楽譜挿画、和達和夫の音楽会の彩度の高い筆致、田中阿喜良のヴァイオリン弾きの野太い彫刻のような分厚さなどが大変好もしかった。吉村弘という音で遊ぶことが好きそうな方の作品がギャラリーの個展くらいの密度で展示してあり、これは吉村弘さんのファンがおれば行くべきであろうと思った。肝心のカイ・フランクの方は…展示品は大変よいし時系列と図形で座標をとって展示品を並べていたのは大変端正であったのだが、いかんせん…いかんせん点数が少ない。二部屋に納まる程度というのでは、何がなんでもカイ・フランクの大ファンであってこれを見なければ俺はきっと死ぬというほどの人物以外は無理してくることはないだろう。しかし暑くも寒くもない気候をねらって葉山に散策に来たというのであればついでに見るのにうってつけの展覧会ではある。フィンランドのガラス食器、インダストリアル、バウハウス、そのあたりでふわふわと思い浮かべたものをまるめて精髄を取り出したような作品群である。直線や直角や真円を大事にしたデザインで、素人には、セレクトショップまたは上等の家具屋の小物でこういうの見たことあるなぁ、量産ベースに乗らなかったデザインもあったんだろうなぁ、職人さんは指定と同じ色を出すのに苦労したんじゃないかなぁという程度の感想しか出てこない。端正は大好物だが、後頭部を鈍器で殴られるような、または突然脳みそが開けて通気性がよくなるような、そういうことが起こる展覧会ではなかった。

案外スマートに見終わってしまったのでしおさい公園に行くつもりで散歩している途、車通りに出るための小路の塀に落ちた影が面白かったので撮った。

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車通りを歩いていると小さなレストランに行き当たった。Villa Mareaという。桂太郎ゆかりの地であるようなことが書いてあったように思うがよく覚えていない。塀の掲示を見るとプリンを8種類も用意している。お昼時のど真ん中だが二人しか客がいないのをいいことにプリンだけでもよいかを聞いてみるとよいというのでおすすめを二種類ばかりいただくことにした。

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たまり醤油のなめらかプリン300円である。こちら大変うまい。どううまいかというとまず上層はが立つほどに相当ハードでソリッドである。しかし中層から突然滑らかとろとろになる。そうしてそのとろとろと底に沈んでいる粘度低く香ばしいカラメルソースの相性が大変よろしい。ハード系ソフト系を一つで味わえるという意味で大変稀有なプリンであるように思われる。一体どうやったらこうやって上層と中層以下で硬さを変えることができるのか、蒸すときに浸けるバットに氷水でも入れておくのかと思ったが聞きそびれたので謎のままである。またこちらにはたまり醤油に由来するであろう複雑な香気があった。プリンは材料がシンプルな分香りも幼くシンプルになりがちなところたまり醤油で深みを与えるというのは大変よい考えであると感心した。

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もう一つ頼んだ本日の野草茶プリンはオオバコ茶を使ったものであった。300円。上層に延べてあるゼラチン質が多分野草茶に由来する。こちらは均質で香ばしいうまいプリンであった。しかし野草茶を飲みつけていないのでオオバコらしさというのはよくわからなかった。

少し歩いたらしおさい公園への道しるべを見つけた。入場料は300円、美術館の半券で50円引きという。御用邸の跡地というのでどのようなものかと思って歩いていたら芙蓉が咲いているのに行き当たった。近づくと食欲旺盛な芋虫が全体にたかっている。しかしそのそばでは庭師が草を刈りこんでいる。彼らも駆逐されてしまうかもしれず、そのまえにいじらしく葉を食む様子を撮っておきたいと思った。

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それから同公園内にある無料のしおさい博物館を訪ねた。入口にダイオウグソクムシとオオグソクムシの展示があり、その腹尾節の様子を見て急に自分が持っている茶こしがあるいはダイオウグソクムシではなくオオグソクムシだったのではないかと不安になった。しかし今これを書きながら調べたところやはりダイオウグソクムシでよかったようだ。

閑話休題

しおさい博物館は非常に充実していた。昭和天皇御下賜のヨット、葉山で使われていた漁具、貝類標本、魚類標本、相模湾の珍しい大型生物の標本に加え、よい絨毯を敷いた昭和天皇御下賜の標本室があった。逗子の博物館が運営困難に至った中でこんなにも人の寄らなさそうな葉山の博物館が元気に開館しているのはこれが理由かと合点した。

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よい葉山散歩であった。

 

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