即興厨房

大船市場で野菜を大量に買い込んでええ感じのお総菜を一週間分作ってはブログに記録する人です。器は骨董屋でこつこつ集めたぐい飲みやお猪口です。美術展、本、たまの旅行も記事にします。好きな動物はチー付与のどんぐりです。

梅雨の晴れ間をえのすいで

えのすいアオミノウミウシが入荷したという話を聞いてから行かねばと思っていたのだ。しかしその情報をくだすった職場のウミウシ仲間の話ではコロナ明けもあって割と混んでいたとのこと、いつ攻めるのがよいか逡巡していた。逡巡しているうちに7月になってしまった。このままでは夏休みが始まってしまう。それでも雨の日を狙うつもりだった。

(夏休み前の雨の日なら相当空いているだろう)

しかし休みとの折り合いで結局梅雨の晴れ間の今日という日にえのすいを訪ねることになった。この富士山の見事さよ。

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生物の新着情報はえのすいサイトのトップページに掲載されるがお亡くなり情報が更新されるかはわからなかったので前日に電話して状況を確認した。アオミノウミウシはラスイチ、ギンカもエボシもご存命で皆クラゲコーナーにいるとのことだったが生き物のことなので明日どうなるかはわからない。しかしまぁ翌日ぐらいは大丈夫だろう、そんなことを思いながら入館しまずはクラゲファンタジーホールをめざした。ところが見当たらない。ほんのりと不安になりながらさらに進むとその先のクラゲサイエンスという展示室におられた。

アオミノウミウシさんは生き物スレによく登場するちょっと神がかった造型のウミウシである。多くのウミウシが底生生物であるのに対しアオミノウミウシさんは遊泳生物であらせられる。ギンカクラゲカツオノエボシに付着便乗しつつ美味しくいただいたりもしちゃってる非常に合理的なお方である。実に鮮やかな紺碧と白のコントラストはその名状しがたい造形と相まって一度見たら忘れられない。なおえのすいアオミノウミウシさんは小さな水槽の水流の具合か左手奥のパイプの陰から一歩も出てこられなかったので写真はない。隣の水槽にはカツオノエボシがいた。こちらも目の覚めるようなつやつやの藍色が美しい。ギンカクラゲは大分くたびれた様子で笠の縁が曖昧になっていたが触手をもくもく動かしていた。ファンタジーホールには主に大水槽、クラゲサイエンスには小さい水槽があり、それぞれに見合ったサイズのクラゲが展示されている。

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これはファンタジーホールのたぶんパシフィックシーネットル。他、サルシアクラゲ口柄がなんかエロイなーとか、キャノンボールジェリーは確かにころんころんしてて口腕がフリルみたいでチャーミングだなーとか、アトランティックシーネットルの薄絹感が異常とか、楽しいよね、クラゲ。

アオミノウミウシを見るという目的を達成したので入口に戻ってゆっくり見直すことにした。相模湾大水槽のイワシの群泳はいつ見ても見事だがシノノメサカタザメ君の姿が見えない。案内板からも名前が消されているところを見るとおそらくお亡くなりになったのであろう。新しくシラスの展示コーナーができており生シラスは灰がかっているが生体は透明で美しいことを知った。相模湾キッズ水槽コーナーには新入荷のオヨギピンノが大量におりめっちゃ頑張って泳いでいるのが大変かわいい。また同コーナーにはシロウミウシ、ハナオトメウミウシアオウミウシも展示されていた。ウミソーメンが水槽のそこかしこに見られたがウミウシの飼育は難しいらしいのでたとえ孵化しても成体には至らないだろう。しかしえのすいはクラゲの飼育にいち早く成功したすばらしい技術力を持っているのでウミウシもそのうちいけるんじゃないかなー。ホンソメワケベラがどの水槽にもいる気がするとか、サギフエがひょうきんだとか、ダンゴウオ一族は安定の可愛さとか、マンジュウイシモチの模様はどうしてありもののパッチワークみたいなのかとか、まぁいろいろ、いろいろ。

二階に上がり、小腹が空いたような空いていないような気分でオーシャンカフェを覗くと、ダイオウグソクムシパンがあった。

買った。

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中身はごまあん、260円である。可もなく不可もない味だがかわいいからヨシ!

ところでえのすい二階のこのオーシャンデッキは実につくりがよい。席のしつらいが三種類あり、海を正面にバーのようなカウンターテーブルとチェアの組み合わせ、普通のダイニングテーブルとチェアの組み合わせに加え、ものすごく座面の広いネット状のソファっぽい椅子とローテーブルの組み合わせの席がある。

このものすごく座面の広いソファの席がいい。

どういいかというと、座面が広くて背もたれがあるので靴を脱いで胡坐をかいたりできちゃうのだ。なんなら横になったりもできるのだ。屋根がないので日差しには焼かれるが、これ、ほにゃほにゃしたちびっこでも安心して座らせたり寝かしたりできるありがたい設備である。カクテル飲んでエロい気分になりたい大人にはカウンター、ちびっこを擁したファミリーにはソファと至れり尽くせりなのだ。素晴らしきかなえのすい

まぁただ日よけがないんで日傘は持ってきた方がよい。

その後ウミガメコーナーの上から写真を撮った。

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昼食のために一旦水族館を出て江の島駅に向かった。しかしハンバーガーもパンケーキも気分ではなく魚なら鈴木水産で買うわという気持ちになってしまい全く定まらない。湘南堂を覗いたが時間が悪かったのか原宿ドッグと食パンしかない。結局江ノ電駅前のストリート・カフェ・レトまで戻ってパンを物色することにした。ピロシキを持って会計に行くと「玉子サンド作ります」という張り紙を見つけ急遽そちらにしてもらう。出てきた玉子サンドはいり卵とオムレツの間のような加熱した玉子とロースハム、レタスをなんだかやけに甘いコッペパンに挟んだもので確かに玉子サンドだが思っていた玉子サンドからは全方位異なるものであった。えのすいまで持ち帰りぽそぽそ食べながら商品写真の重要性を再認した。

再入館したのは2時ころだったがこのくらいになると人が増えてきてやや密な感じになってくる。なぜか女子高生の二人連れが散見される。えのすいの入館料は高校生でも1700円と決して安くはないと思うが、デートでもないのにそれだけの金員を費やすほど水族館が好きなのか、それとも近在の高校生は入場無料などの措置が取られているのか、いずれにしても女子高生の二人連れはよいものなのでいいぞもっとやれ。

カップルが増えすぎて辛くなってきたのと三周したのでもう十分という気になったのでえのすいを辞した。

晩のおかずを買って帰ろうと思ったが魚なら鈴木水産というここで出張ってこなくてもいいスローガンが脳内に響きどうにも買う気にならない。もうモノレールで大船に行こうかと思い散策しているとモノレールのビルの少し先に小さなテイクアウト専門店を見つけた。メニューはカレーとファラフェルサンド、ファラフェル、フムスなどである。店頭でスパイスの小分け販売もしている。全体的にすごくうまそうなのとファラフェルを食べたことがなかったのでここでおかずを買っていくことにした。ファラフェルが6つ、ヨーグルトソースをつけて400円という値ごろさ。揚げるのに5分ほどかかるというので代金を先払いして少し散策することにした。ここいらに江ノ電を埋め込んだ和菓子屋があったことを思い出しそこの江ノ電もなかを土産にしようかどうしようかそんなふわふわした気持ちで気ままに歩いた。訪ねてみると皮を剥いた小豆で拵えた和三盆の水ようかんが130円で大変おいしそうだったのでそれを買うことにした。お店の人がよかったら食べていくよう椅子を勧めてくれたのでお言葉に甘える。小豆の皮を剥くことによって味わいがどれほど変わるのかはよくわからないが小豆色は浅く甘みは涼やかである。味わいよりも口中に含み舌で圧するとと柔らかくほどけていくようなその寒天の塩梅がとてもよい。今日は暑いけれど風があるからよかったですね、うちの母は以前このあたりに住んでいましてね、などと遠くからやさしく伺いあうような会話を交わした。

それからテイクアウトの店に戻ってファラフェルを受け取った。帰って頂いたところこれがすこぶるうまかった。ものすごくぎゅうぎゅうにまとめた種が緻密なパン粉をまとってからりと硬く揚げてある。スパイスは奥ゆかしく、ヨーグルトソースは控えめで、日本の揚げ物にイメージされる油っこさくどさはなく非常な充実感がある。店の名前を控えるのを忘れたのが非常に残念だが次にえのすいを訪ねた際はきっとここで昼を買おうと思ったのだ。

晩のおかずを手に入れたので大船には寄らず行きと同じ江ノ電で帰った。鎌倉に向かうときは左手に座るとよく海が見える。傾いてきた日差しが強い風と相まって海がやたら白くせわしなく輝いていた。