この日は昨日より雪が深かった。しかし三日目の方がよい写真が撮れていたような気がするのだ。
曇天のせいかも知らん。
それにしてもどうして金沢城の石垣はこうもかっこいいんだ。
なおこの旅程中で自分は一度も兼六園に入園料を払わなかった。ありがとう早朝の無料開園。
ホテルに戻って最後の朝食。
新メンバーはへしことウサギの煮込みと写真にはないが近江牛のコロッケである。ウサギは洋風の仕立てであった。これで最後なので親の仇のようにのどぐろを頂く。近江牛のコロッケは近江牛はともかくとしてコロッケとして非常にうまい。タネが甘く上げ具合が非常にカリカリなのである。オススメである。
こちらのホテルでは部屋の掃除を謝絶すると館内で使える500円のクーポンをもらえる。それでル ミュゼ ドゥ アッシュ KANAZAWAのYUKIZURI冬季限定柚子風味を一箱購入した。このホテルはきちんと買いたくなる土産を売っていてありがたかった。
荷物をみちみちに詰めてキャリーケースの発送を依頼し、成巽閣に向かった。
こちらは職場の金沢出身の方にぜひ訪ねるようにと強く勧められたところである。撮影不可だったのでなかの写真はないが、建物展示共素晴らしいものだった。ことに奥方が身近に使っていたであろう調度に圧倒された。袱紗に施された加賀刺繍、日用品に施された加賀蒔絵の精緻さ美しさよ! こんなこともあろうかとマルチモノキュラーを持参しておいてよかった。
しかしこちら空調がないため恐ろしく寒く足元が冷たい。今日こそ足にカイロを貼ってくるべきであった。
尾山神社は大変モダンでよいのだが正面に横断幕がかかっていて興冷めであった。
すぐ近くの平岡結納補で水引ピアスの作り方を教えていただいた。ご婦人が丁寧に指導してくれるのだが説明が独特で妙味がある。「先に通したのをストーカーするのよ」終始そんな感じなのでわかりやすいんだかわかりにくいんだかよくわからない。自分も耳飾りを作って近しい人に有料で頒けているということを話すと、急にいろをなくして、このデザインはうちのオリジナルだからお友達につくるのはいいけど商売にしないでください、という。自分はどちらかというと水引の扱いを勉強したくて来たのであって、そのままのデザインで販売したりはしない、というと、安心した様子であった。なんでも地元の大学のサークルのお嬢さん方が体験に来た後ネットでまるで自分たちのもののように商売にしている、梅結びの裏の始末の仕方はうちのオリジナルなのでやめるようにいったがやめてくれない、何かできないかと娘にも相談したが結局労力がかかるので諦めた、悔しい、とのこと。後継者もいないし体験も今年度限りというので、じゃあその女の子たちを引っ張ってきてやらせりゃあいいじゃないですか、それが責任じゃないですかといったがご婦人は黙って首を振るばかりだった。家に帰って調べたら確かに水引体験を売りにしている地方大学のサークルが見つかった。聞捨てならん理不尽であったのでここに記録する。
ここから二つ選ぶ。
これが
こうなる。体験料は3000円。母の正月用である。
帰ってから母に引き渡す前にメタルビーズを淡水パールに変更した。
趣味の問題ですよ、趣味の。
どれだけおでんが好きなのかといわれそうだが、近江町市場のいっぷくやでおでんを頂いた。
かに面が食べられればなあと思っていたが残念ながら売り切れであった。左上に見えるふかしが思いのほかうまかった。
近江町コロッケでタココロッケをいただいた。うまいはうまいがホテルのコロッケの方が印象が強い。
表敬訪問のようにのざきの焼き魚で焼き泥鰌を頂いた。これについては何ともいえない。
温めたらもう少し美味かったかも知らん。
近江町市場の品物がぐっと来なかったので早々に駅に向かった。大分時間に余裕がある。そこで名残のもりもり寿司としゃれこんだ。
ガスエビ
香箱蟹
Aガイアで要冷蔵の土産を買うことにした。かに面398円、ふかし148円、金澤の郷土料理研究家青木悦子のかぶらずし1600円。かに面とふかしは帰ってからおでんにした。かに面は、カニの甲羅に蟹肉と何かのすり身と春雨が入っており、楽しいがものすごく旨いというものでもなかった。ふかしは紅白のはんぺんとかまぼこの間のような食品で、これはなかなかよい。青木悦子のかぶらずしは発酵食品ならではのほどよい酸味と蕪の葉の歯ごたえと鰤のうまみと蕪のなめらかさがことのほかうまく大変良い買い物であった。よくまあ鰤と蕪をこうやって合わせて麹で漬けようとおもったものだ。もしまた行くことがあったらぜひ買いたい。
もう一度あんとに戻って俵屋で飴ん子のしろと黒糖を買った。それから未練がましく見回っていると難ありの車麩が袋一杯で421円で売っていたので大儲けした気分で買った。家に帰っておでんに入れたら当たり前のように美味かった。
この旅の最後の目的のためにえきべん処金澤に向かった。
三日前から予約せねばならない加賀魯山人弁当1860円。
箸と弁当箱が山中塗りなんである。
「在陋巻不改 其樂賢哉」とは魯山人の精神を表した漢詩で、説明書きによると「せまく汚いうらだなに住んでいて一向に改めようとしない その方がかえって気楽で肩がこらない」という意であるとのこと。魯山人はこの図柄を入れた漆器を蒔絵職人の辻石斎に作らせて星岡茶寮で使用していたそうである。
夕食用に無事確保して、早めに新幹線の待合に行った。ソーシャルディスタンスのため席が半分しか使用できず東京行き到着のころにはかなりの人があぶれていた。
我が家に帰り着き、弁当を開いた。
炊き込みご飯はブナシメジ。鮎は甘露煮で頭から骨ごといただける。堅豆腐の田楽も鴨ロースもカニしんじょも皆それぞれうまいもので、確かに魯山人の心づくしを頂いているようであった。
良い旅だった。