即興厨房

大船市場で野菜を大量に買い込んでええ感じのお総菜を一週間分作ってはブログに記録する人です。器は骨董屋でこつこつ集めたぐい飲みやお猪口です。美術展、本、たまの旅行も記事にします。好きな動物はチー付与のどんぐりです。

【三泊四日の】冬の金沢一人遊び【一日目】

新幹線ホームへの階段を上り切ったらゼロキロポストがありのっけから興奮。

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だいぶ早く着いてしまったのでうろうろして連結を撮ったりして遊んだ。

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金沢駅に着いたので予約していたエキナカおでんの黒百合さんへ。シュウマイ200円、蕗280円、車麩200円、赤巻180円、玉子100円、鰯つみれ350円を頂く。シュウマイがこんなにおでんに向いているとは知らなんだ。蕗は舌触りが滑らかで下地を含みきっていてかすかにしゃきしゃきした歯触りがあって大変うまい。車麩のなかなかの歯ごたえと下地を含むために生まれてきたといわんばかりの奥ゆかしい味わいにたまらなくなり今後おでんには車麩を採用することとした。赤巻きは金沢おでんの名刺のようなものなので頼んだが面白いものではない。自家製つみれは良質。玉子は玉子。

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どうしても我慢できなかったので頼んだ白山豆腐450円。8切れ。山葵が大変よろしく、合わせていただくと特上のうまさ。

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腹もくちくなったので甘清堂さんに和菓子体験に参る。

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ひたすら練って丸めて伸ばして包む。進みがやたら早く他の体験者になかなかに不評であった。しかし何しろ1200円である。贅沢を言うのはよろしくなかろう。後で聞いたところでは石川県観光物産館で開催している和菓子体験は手厚いようだ。自分も三種作れる物産館にお願いしようと思ったところ冬季平日開催は二種二つずつの甘清堂さんのみだったのでお世話になった次第。いずれ父母への土産である。

こんなことならもっときちんと実物を見ておくんだった東北新幹線「つばさ」

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水気の補給先が紙おしぼりしかなくどうにも葉が罅割れてしまった椿

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生地のぼかし方、道具の使い方の要領など何となく理解できたので良かった。

それから県立美術館に向かった。こちらは撮影不可だったので写真はない。しかし小規模ながらテーマのしっかりした特別展を複数同時開催しており大変見ごたえがあった。「石川の文化財展」は仏教関係が多く美しいというよりも勉強になった。「加賀藩の美術工芸2」は巌波蒔絵真鳥羽入箪笥という殿様の羽毛コレクションを収めるための箱の漆芸がすさまじかった。螺鈿で表現した岩、波含め実に見事な細工である。また伝周文の山水画もよかった。祖父の家には季節ごとに掛け軸がかかっていたが、どうにも好きになれない水墨画があり、しかしあれはきっとこれをめざしていたのだろうと腑に落ちた。「石川の工芸」ではとにもかくにも小田清山の細字小倉百人一首和歌花瓶がぶっちぎり変態でよかった。それほど大きくもない花瓶に色紙を描いてみっしりと百人一首を草書で書きさらに百人の歌人を並べたというすさまじい花瓶である。超絶技巧of超絶技巧ではないか。こればかりはカタログなどで見ても大して意味はない、実物を見て気おされ悦楽と共に項垂れるのが相応しい。小宮康孝による江戸小紋菊通し着物もすさまじいものであった。武腰敏昭の陶芸作品もモダンでデザイン的でこれを見た人は世の中にこの美しさをもっと広めたいと思っただろう。木村雨山の染色馬二曲屏風も画面構成色使い力強さ併せ非常に強く印象に残っていて、きっとこれからの人生で繰り返し思い返すような作品だった。松田権六の松蒔絵飾り箱は相当漆のことを「わかっている」人が過たずものしたものであることが伝わった。そして「きらめく美」がすさまじい。金箔を細く切ったものを張り付ける仏像装飾の截金を使った工芸、その繊細で精緻な作品群の美しさはたとえようもない。高瀬信から西出大三に連なる豪奢な作品群は誠にもってすばらしいが、殿様が贅を尽くした日用品を求める時代が過ぎた今でもこれら作品を愛でてくれる人はいるのかと心配になった。国宝である野々村仁清の色絵雉香炉が至近で見られるのもよかった。しかし個人的には色絵雌雉香炉の方が全体銀の色目が渋くて好きである。

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この寒いのに紅葉の色が関東よりはるかに色鮮やかに遺っているのに驚愕した。

今回は金沢白鳥路ホテル山楽にお世話になった。朝食のバイキングが楽天トラベルで連続4年首位を獲得し、金沢城兼六園にほど近く、温泉があるという大変ありがたい宿である。

宿に着くなり予約していたお薄と吉はしの和菓子セット1150円を頂く。抹茶には金粉が散らしてあり金沢気分を盛り上げてくれる。和菓子は素材の味を大切にしたもので十分に美しかった。

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ロビーは大正ロマンを謳う通り夢二あたりの絵に出てきそうな調度品やらステンドグラスやらまた九谷の秀品やらで構成されていて華やかである。難といえば外観が大変そっけない箱ビルであり白鳥路沿いの入り口からロビーに入るまでが少し遠くつきあたりにステンドグラスがあるためトリップアドバイザーだかじゃらんだかのレビューにあった通りどこか昭和のラブホテル的な印象を受ける。しかしそれはほんとうに最初のみで、入ってしまえばインテリアやホスピタリティで全く気にならなくなる程度のものだ。

部屋は想定以上にアメニティが充実していた。冷蔵庫の飲み物は全て無料でキリンビール350缶、ミネラルウォーター500、100%オレンジのトロピカーナ500、加賀棒茶330が2本ずつ入っておった。2本というのはツインを一人で使ったためかもしれないがいずれ有難い話である。ティーバッグは坂緑香園の加賀棒ほうじ茶とさしま茶の煎茶、こちらがすこぶるうまくおーいお茶に備えて用意していた自前の茶葉を一度も使わずに済んだ。茶菓子はル・ミュゼ・ド・アッシュのYUKIZURIのルビーロマン、うまくないわけがない。コーヒーメーカーはKEURIGでカプセルはブレンドエスプレッソ、大変便利である。これら消耗品は連泊の場合部屋の掃除にかかわらず全て補充してくれるのでありがたい。茶器は全て九谷焼できらびやかに美しい。

夕食として駅で買い込んできた駅弁輪島朝一弁当1100円を頂く。こちらは輪島朝市組合公認で見ての通り大変渋い弁当である。品書きは、かきめし、かき、厚焼き玉子、白身魚ふんわり揚げ(魚肉ねり製品)、いかとわかめの酢の物、サザエいしる煮、たらこ旨煮、ぶり角煮、中島菜入り固豆腐、ごり佃煮、大根味噌漬け、のりとなる。それもこれも頗る美味い上に575kcalに納まるありがたさである。明日の朝食バイキングではきっと欲張りたくなるから胃に負担をかけない前準備なのだ。

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自分は風呂に浸かるとのぼせるくせがあったので長くなじまなかったが、年経たせいであろう、温泉で体の疲れが取れるというのを始めて体感した。温泉はよいものである。こちらの風呂場にはシャンプーバーがありサウナと水風呂も設けられている。脱衣場にはミニッツメイド爽健美茶かなんかのディスペンサーがあるがせっかくなので冷蔵庫のトロピカーナを持参した。タオルは当然用意されているがあかすりはないので部屋から持参するのを忘れないようにしたい。浴場の外には小ぶりのアイスが用意されていたりして心遣いが細やかであるが、旅程で極上の甘味を頂きまくる予定なので遠慮した。

明日は初雪だそうだ。