花びら餅

餅にははっきりした甘味を覚えない。やわやわと、ただやわやわとした柔弱で優しい感覚のみが口の中に戯れるようである。餡は白味噌風味の白隠元、何度も水に晒したのであろう、膨らみがあるのに混じりけのない風雅な味わい。牛蒡は十分に加熱された繊維質の舌ざわりのみを微かに残してすぐに消えゆく。花びら餅はその昔宮中で雑煮の代わりに下賜するために考案された雑煮と同一の具材を用いた菓子だと聞いた。ほんとうなら七草がゆを食べる日にこういう菓子を頂くのもまた正月の楽しみと思われた。