2022年2月19日、横浜港大さん橋ホールで開催の素材博覧会に行ってきた。
素材博覧会とは、オリジナル、アンティーク、デッドストックなど何でもありの、ハンドクラフト素材の展示即売会である。
新型コロナ下での規模縮小の影響のためか、今回から入場料500円となったが、こちらとしては存続してくれるだけでもありがたいというのが正直なところである。
以前科博の元素展で見たウランガラス、汐留ミュージアムの高砂コレクションで見たローマグラス。私はこれらに非常な美を覚えたが、一方でこれらは市販されておらず、博物館でしか見られないものだと思っていた。
ところが素材博では親しみやすい価格で販売しておったんである。
ミネラルショーの類は結構覗いていたのでそちらでも出会うことがありそうなものだが、記憶の限り出品はなかった。ガラスは人工物なので扱わないということなのか。
このように、想定外の素材に出会え、またオリジナル素材製作者の方のものづくりの姿勢やこだわりをじかに伺うことができるというのがこの展示即売会の稀有な点である。
さて、今回は素材博でワークショップ2コマとレクチャー1コマを受けてきたので内容をかいつまんでご紹介したい。
ワークショップ メタルプレート付アクセサリースタンド by m.b.wirefactory
工具貸し出し材料費込みで1000円というありがたい値段設定。
一番勉強になったのが、「ワイヤーは指で曲げるのでなくその弾性を利用して流れを導いて形を作ればよい」というようなことである。
ワイヤーアートの教本にある下書き通りにワイヤーを曲げるというのが全くできなかったのだが、曲げたい個所に指を当てて曲げるのではないということを学べたのが大変な収穫であった。
会場で申し込み。
製作時間は45分ほど。
※写真は諸事情により公式よりお借りしました
開催はあのアーティスティックワイヤーの輸入業者の泰豊トレーディング株式会社である。
レクチャー すべらない“シェル”の話 by HAPPY MARIN 橋本賢治
聴講無料。
様々な貝を現地で買い付けし磨きあげてアクセサリーパーツに加工しているHAPPY MARINの橋本さん。
いうほどこてこてでもない関西弁で、確かに滑らない貝にまつわるエピソードを30分みっちりと聞かせて下さった。
橋本さんは沖縄の長嶺鮮魚さんで生きた夜光貝を買い付け、酸性溶液や漂白剤は使わずひたすら物理で研磨してその美しさを引き出しているという。貝殻なんだから死んでようが生きてようがかわらんと思うのが素人だがそこは多く素材を扱っている人のみが知ることができる違いがあるのだろう。そういうこだわりのある人の品は信頼できる。
以下貝愛半端ない橋本さんによる滑らない貝のエピソード:
・海辺の飲み屋の周りに良く落ちているサザエのフタ、インドではSiva Eye Shell、ナポリではSanta Lucia Eyeといわれ、魔除けに使われていた
・シャコガイは浄土真宗の仏説阿弥陀経に出てくる七宝「金・銀・瑠璃・玻瓈・硨磲・赤珠・碼碯」の硨磲である。今はワシントン条約で輸入禁止になっているため現在加工に使っているのは国産の品のみである
・大国主命が大けがした時に助けたのは蛤の女神
・蛤に似た弁慶貝に穴をあけた腕輪が縄文時代の超トレンドアクセサリー
・正倉院の宝物の螺鈿の素材のほとんどは夜光貝だが楓蘇芳螺鈿琵琶にはアワビが唯一使われている
などなど。
丁度アワビの殻を草津の湯に浸けたらどうなるのかな?実験を画策していたところ、貝の加工を行っている人の講座があると知り飛び込みで聴講し、終了後加工の工程や拘りなどを聞かせていただき、大変勉強になった次第である。
貝は磨くと思いがけない美しい表情を見せるものだということを実物で見せていただいたので、今度海岸で拾った貝も磨いてみようと思いました(小並感)。
やっぱ酸性溶液とか使うと貝が痛むんだな…。
ワークショップ ワイヤーワーク【青空お目目のトビウオくん】 by feel.b.mico
工具貸し出し材料費込みで参加費1500円というこれまたお得価格。
事前申し込み可能だが、何時に会場入りできるかわからなかったので焦燥しつつ現地申込。空きがあってよかった。
こちらの講師の先生は非常に軽快でポップな教えかたをしてくださるので楽しかった。
鬼門だったワイヤーの鋭角的な曲げ方を学べたのが大変な収穫。平ペンチで挟んだところに指を当てて曲げるのだが、たかがそれだけのことが独学だとわからず躓いたりするのだ。
あれだけ先生にいじりすぎないように言われたのにいじってしまい歪んでしまった鰭条。ごめんね。
下記リンクから作品を是非見ていただきたい。この人の爬虫類すっごいの。特にカメレオンがかわいい。造形力の神か。
https://www.instagram.com/feel.b.mico/
というわけで、新しい素材との出会いもさることながら、ワークショップで新しい技法、レクチャーで新しい世界観に触れることができる素晴らしいイベント、それが素材博覧会である。
モノづくりをしている人なら、ジャンルを問わず世界を広げるヒントがあると思われるので、参加するといいよ!