この記事でわかること
2026年11月29日から2026年3月29日までインターメディアテクで開催された『メテオラプソディ – 隕石探査』の見どころ
- 隕石が太陽系の歴史を解明するためのかけがえのない試料であることがわかる
- JAXAが回収した「はやぶさ2」の小惑星リュウグウ試料と、NASAの「オシリス・レックス」が採取した小惑星ベヌー試料、そしてそれらと同一の組成を持つ地球で採集された隕石が同じ場所に集合している! すごい!
- 火星由来の隕石と月由来の隕石が展示されている! すごい!
なお本文中の強調は全て筆者による。
特別展『メテオラプソディ – 隕石探査』
東京駅丸の内KITTEで2026年11月29日から2026年3月29日の間、隕石をテーマにした展覧会『メテオラプソディ – 隕石探査』が開催された。

諸事情によりじっくり写真を撮ることができなかったが、展覧会の見どころをご案内する。
展覧会の趣旨
まず、今回の企画展の趣旨を公式サイトから引用する。
宇宙から飛来する星のカケラ、隕石(いんせき)は、45.67億年前に起こった太陽系の誕生とその後の天体進化の歴史を記録したタイムカプセルである。 本企画では、隕石がどこから来たのか、どのような姿をしているのか、そして私たちに太陽系の物語をどう伝えてくれるのかを、実物の標本展示を通して紹介を行う。 さらに、希少で貴重な研究試料としての隕石がどのように採集されるのかを、世界で最も多くの隕石が採集されている南極での探査映像と、国立極地研究所より借用する南極隕石の実物標本を併せて紹介する。
近年は月や小惑星などから探査機による直接採取が活発化しており、本企画では宇宙航空研究開発機構(JAXA)が回収した「はやぶさ2」の小惑星リュウグウ試料と、米国航空宇宙局(NASA)の「オシリス・レックス」が採取した小惑星ベヌー試料も期間限定で特別展示して類似の隕石と比較する。(公式サイトより)
隕石はどこから来るの?
まず、隕石はどこから来るの? という話であるが、
かねてより隕石落下映像の解析から、隕石は火星と木星の軌道間に広がる小惑星帯が起源と推測されていた。この仮説は、2010年、宇宙航空研究開発機構の「はやぶさ」探査機が小惑星イトカワから持ち帰った微粒子の精密な鉱物分析によって科学的に実証された。
小惑星は、太陽系誕生の45.67億年前から1千万年前ほどの間で、惑星と進化することができなかった小天体の成れの果てである、ただし、小惑星には、太陽系誕生時の微惑星をとどめるものから、原始惑星まで成長を遂げたものまであり、進化の規模は実に多様である。そして、この多様性こそが、隕石の研究を通じて天体進化の複雑なプロセスを解明する鍵となっている。(展覧会説明パネルより引用)
ここからは
- 地球で採集されるほとんどの隕石は太陽系の小惑星に由来するという仮説が立てられてきたこと
- その仮説はハヤブサが回収したイトカワの粒子を分析することで実証されたこと
- 隕石から太陽系の天体進化のプロセスを解明できること
がわかる。
逆に太陽系外から隕石になりうるものが地球に飛来することがあるのか?
調べたところ、2014年1月9日にパプアニューギニアに飛来し大気圏で消滅した隕石と、2017年に飛来した小惑星オウムアムアは太陽系外から来た可能性があると推測されている。
太陽系の外から飛来した岩と氷の固まり「A/2017 U1」(中略)。10月19日に発見された直径数百メートルのこの天体は、現在、時速約15万キロで地球から遠ざかっている。これほどのスピードがあれば、太陽の引力を振り切ることが可能だ。つまり、A/2017 U1がわれわれの太陽系には属さないことを示している。
「A/2017 U1」軌道
というわけでやはり太陽系外から隕石となりうるものが飛来することはなくはないが極めてレアだということがわかったところで展示紹介。
展示
太陽系最古の物質CAI入り隕石 アエンデ

入り口で皆様をお迎えするのは炭素質コンドライト(CV3)のアエンデ。1969年2月8日にメキシコのチワワ州に落下。重量4キロと指折りの大きさ、表面に散見される白い不定形生成物(CAI)が45.67億年前に形成された最古の固体物質。
このアエンデについては東京総合博物館の展示品案内に以下のような詳細説明がある。
原始太陽系星雲では、高温ガス(2000K以上)の冷却に従い、熱力学的に安定する鉱物がガスから順次析出する。この過程を「凝縮」と呼んでいる。希土類元素(REEs)やアクチノイド(ThやUなど)も1500Kと高温のうちに固体へと凝縮する(ただし、これらの元素を主成分とする鉱物として析出するわけではなく、ほかの元素や鉱物と一緒に固相となる)。主要元素としては、1700-1500Kでカルシウムやアルミニウム、チタンなどがケイ酸塩鉱物や酸化鉱物として凝縮し、次に1400Kほどでマグネシウムやケイ素、鉄と続き、隕石に含まれる主要鉱物や金属を形成する。CAIには初期太陽系での凝縮過程で形成したと考えられる高温生成鉱物が多く含まれているだけではなく、より高温で凝縮したと考えられる超難揮発性元素からなる物質が見つかっている。さらにカルシウムやアルミニウムからランタノイドやアクチノイドまでの元素が、一様な濃度をもつ。このことから、アエンデ隕石に含まれるCAIは原始太陽系円盤の高温ガスから凝縮した物質の集合体であることが明らかとなった。(B3 炭素質コンドライトに含まれるCAI)
原始惑星の高温ガスが濃度は一様なまま熱力学的な安定性の順に析出したのがCAI(Calcium-aluminium-rich inclusion)で、この濃度が一様であることこそがガスが高温だったころに凝縮したことの名残と考えてよさそうだ。 つまりこの隕石の上部にある白っぽい斑点が! 45.67億年前に高温ガスが凝縮してできたレアな物質! もっとちゃんと見とけばよかった!
CIコンドライトトライアングル
CIコンドライトと呼ばれる炭素質コンドライトの一グループは、太陽の化学組成と極めて近い組成を持つため、太陽系が出来たときの材料物質をそのまま固めたような隕石と言える。小惑星リュウグウとベヌー資料は、鉱物・科学的にCIコンドライトとほぼ同じ物質で、現在、これらの宇宙の石に大きな注目が集まっている。(解説プレートより引用)
Ivuna型隕石


こちらは1938年にタンザニアに落下した隕石。この隕石の組成と
リュウグウ試料

2019年3月5日(タッチダウンは2月22日と7月11日だったなので題箋になぜこの日付が書かれていたのかよくわからない)に宇宙航空研究開発機構(JAXA)が回収した「はやぶさ2」の小惑星リュウグウ試料と
ベヌー試料

2020年10月20日にOSIRIS-RExが小惑星Bennuから採取してきた試料が同じ組成だったことにより、隕石=小惑星説が立証されたのである。ベリーロマン。
参考:
はやぶさ2とリュウグウ | 地球外物質研究グループ|宇宙科学研究所
OSIRIS-RExミッションとBennu | 地球外物質研究グループ|宇宙科学研究所
南極大陸ヤマト山脈の隕石
この隕石=小惑星説の立証の他、日本が隕石研究において果たしたもう一つの大きな業績が、南極大陸での隕石の発見である。
日本の南極隕石探査の歴史は、1969年、第10次南極地域観測隊により9個の隕石が発見されたことに始まります。これ以降、24回にわたる調査でおよそ17,000個の隕石を採集しました。
1969年、第10次南極地域観測隊がやまと山脈南東の氷床の調査をしていたところ、偶然にも9個の隕石を発見しました。わずか9個の隕石にも関わらず、6種類もの隕石を含んでいたことは、後の南極における隕石探査に大きな影響を与えました。
(南極隕石探査の歴史 | 南極隕石ラボラトリー|国立極地研究所より引用)
1969年のやまと隕石の発見以来、現在までに、48,500個以上の隕石が南極氷床上から回収されています。国際隕石学会に登録されている隕石の約60%は南極から採集されており、南極は、地球上で最も隕石が沢山採集される地域と考えられています。
南極隕石は、内陸の山脈周辺部で多く見つかります。このような南極内陸の山脈付近には、表面に積雪の無い氷床(「裸氷体」と呼ばれる)が露出しています。氷床は、降雪が時間経過とともに圧密を受けた結果生じます。この氷床は通常、内陸から沿岸へ向けて流動していて、この氷床の動きと南極隕石の発見に、大きな関係があると考えられています。
南極に落下した隕石は、表面の雪にとりこまれます。雪が降り積もるとともに埋没し、雪の圧密とともに、氷床の中に取り込まれて、氷床の流れとともに、深部あるいは沿岸に向かってゆっくりと流れ出します。
山地などでは、氷床がせき止められるため、局所的に上昇流が起こります。またこの地域は、「カタバ風」が強く、上昇した氷は継続的に昇華されます。このため、結果として氷床の中に取り込まれた隕石のみが取り残されます。
以上のように、南極隕石の集積機構のモデルが提案されています。
南極隕石の集積機構
(南極隕石について | 南極隕石ラボラトリー|国立極地研究所より引用)
南極が隕石湧き処であるということは以前隕石コレクターという本を読んで知っていたが実物を見ると感慨深いものがある。
火星隕石nakhlite

というわけでこちらがヤマト山脈で採集されたやまと隕石である。なんとこちら火星の地殻からやってきた火星隕石nakhliteだそうだ。発見時の重量は13kg、メインマスは大阪万博で展示されていたそうな。いやいやこれここで見られるの凄いでしょ。
ユークライト(たぶん小惑星ベスタの地殻から)

こちらも南極大陸で採集された隕石。題箋では「たぶん小惑星ベスタの地殻から」、グループ名はユークライト(モノミクト)とある。
ユークライトとは?
主にケイ酸塩鉱物からなる隕石(石質隕石)の一種です。
石質隕石は球状の粒子を含むコンドライトと含まないエコンドライトに分類されますが、ユークライトはエコンドライトの一種で、小惑星に由来すると考えられています。
(FPDM: 標本データベース - ユークライトより引用)
月隕石(海の玄武岩)

こちらは月隕石、海の玄武岩。ロマンしかない。
テクタイト
テクタイトとは?
テクタイトは地球上の特定の地域に散在する径数cm程度の黒色~緑色のガラス質の物体で,液滴型(球・水滴型)や溶融剥離型(縁つきのボタン・帽子型)のものが多く(松田, 2008),かつては月から飛んできたとする説もあったが(柴田, 1965, 1969, 1970, 1971),現在では天体衝突によって地球の表面の岩石が溶融し,その液滴がクレーターの周囲数100~数1000kmの範囲に飛散し固結・落下したものと考えられている.化学組成は流紋岩質のものが多く,月の表面に広く分布する玄武岩・斑れい岩とは大きく異なり,地球表面の花崗岩や砂岩などの溶融物と考えて矛盾がない。
(日本地質学会 - テクタイトの給源クレーターより引用)
つまり隕石そのものが消失してしまっていてもテクタイトがあればそこが隕石落下地点と類推されるいわば隕石の副産物である。
テクタイト(エジプト砂漠ガラス)

こちらはエジプト南西部で発見されたテクタイト。グループ名はエジプト砂漠ガラス。形成年代は2,600万年前。源クレーターは不明。
テクタイト(オーストラライト)

こちらはオーストラリアノノーザンテリトリーで発見されたテクタイト。グループ名オーストラライト。
ボタン型の形状は、一度大気圏外に放出されたものが、再度大気圏に突入して形成されたと考えられる。
(日本地質学会 - テクタイトの給源クレーターより引用)
とのこと。源クレーターがラオス南部となっている。ええ? ラオスに落ちた隕石が砕け散って大気圏に突入してまたオーストラリアに落っこちたってこと? えぐいな。そりゃ恐竜も死ぬわ。
テクタイト(モルダバイト)

写真がおっそろしく下手くそで申し訳ない。こちらはグループ名モルダバイト。採集地はチェコ・南ボヘミア。約1,450年前に形成された。源クレーターはドイツのリース・クレーター。
テクタイト(インドシナイト)

こちらはインドシナイト。タイ・ラオス国境付近で採集された。形成年代は約80年前、源クレーターはラオス南部? とのこと。
隕石が見つからなくても隕石が衝突したことがわかるわけ
他、隕石がそこに存在した証拠としては、落下した隕石と地球の岩石が混合したインパクタイト、シャッターコーンがある。
インパクタイト
隕石の衝突によって、地表は高温になります。温度だけでなく圧力も瞬間的に非常に高くなります。このような高温高圧状態になると、もともとあった鉱物が高温高圧条件で安定な別の鉱物に瞬間的に変わることがあります。その代表的な鉱物としてコーサイトやスティショバイトとよばれるものがあります。2つの鉱物は石英(SiO2)が高温高圧におかれたときにできるもので、クレーターの中から見つかります。また、岩石も衝突によって、インパクタイトとよばれるガラス質のものになることがあります。
シャッターコーン
衝突の中心近くの岩石は、溶けてテクタイトをつくります。溶けなかった岩石も変化します。衝突のときの衝撃波は円錐状に地中を走りぬけていきます。衝撃波はシャッターコーンとよばれる傷を岩石につけます。シャッターコーンは、岩石の中に放射状に広がる傷だらけの割れ目がたくさんできたものです。シャッターコーンは粒の細かい岩石に、きれいにあらわれます。シャッターコーンは、隕石が大地にぶつかり、激しい衝撃波がおこった証拠(なのです。
(いずれも地球のからくりより引用)
隕石の薄片標本の偏光顕微鏡写真
薄片標本とは?
薄片とは岩石をプレパラートに張り付け、光が通過する厚さ(約0.03mm)まで研磨したものです。偏光顕微鏡とは、偏光板をステージの上下に組み込んだ岩石鉱物用の顕微鏡です。オープンニコルとは、ステージ下の偏光板を通過する光のみで観察した状態、クロスニコルとは、ステージ上下の直交させた2枚の偏光板を通して観察した状態です。各造岩鉱物は、偏光に対して屈折率等が異なり、それぞれ固有の性質があります。その性質から、造岩鉱物を識別し岩石を同定します。
参考:岩石薄片の作り方
隕石の薄片標本の偏光顕微鏡写真の展示があり大変美しかった。しかしながら展示台の写真には名称が記載されておらず壁に掛けられたモニターに名称を記載した写真が映し出されていくという知的好奇心ティザーシステムだったためどれがどれやらさっぱり特定できなかった。というわけで仔細はわからないが美しかったのでここにいくつかの写真を掲載する。














頼むっっっ……!!! 情報を……!!! 表で展示してくれっっっ!!!
真空デシケーター

なおすべての隕石は錆びないように真空デシケーターに封じられている。
無料なのになんかすごい展示だった
以上、東京都KITTE2階のインターメディアテクで開催中の『メテオラプソディ – 隕石探査』ざっくりレポである。太陽系原初の隕石アエンテ、そして地球上の隕石・小惑星リュウグウ・小惑星ベヌーの試料はなかなかまとまってお目にかかれない標本である。そして地球に飛来した隕石をまだ到達したことのない火星の石と特定できる科学の有難さ。インターメディアテクそのものも貴族のコレクション部屋感が満載、おまけに入館料無料という太っ腹なので行ってみるといいよ!

