9月23日、秋分の日に、つくば市産業技術総合研究所で産総研特別公開2025が開催された。入場は完全事前予約制で2025年の申し込みは8月8日開始、平素はうかがい知ることのできない25のラボツアーの予約申し込みは8月29日16時開始というスケジュールである。
ラボツアーと異なり19の大変面白い研究体験ブースは入場予約のみで参加可能である。ラボツアー・研究体験ブース双方で研究者に質問することにより分厚く手触りの良い研究者カード(数量限定)を頂ける。また参加者全員に公式ガイドブックと研究者漫画冊子が配布される。アンケートに回答するとAISTボールペンが頂け、また産総研特別公開2025のハッシュタグをつけてSNSに投稿すると研究機構保存棟の所蔵品カードを選んでもらうことができる。
食事は産総研内の4つのカフェ・食堂で研究成果を取り入れた特別メニューが提供される。
初めての参加であったが、無事
「共に生きる」ことの本質を昆虫から学べ!昆虫と菌の共生を研究するラボを一棟丸ごと見学できちゃうツアー
と
メートル原器、上から見るか?横から見るか?メートル条約締結150年記念!ホンモノ(重要文化財)のオーラを浴びまくるツアー
に参加できたので備忘のため記録する。
- 入場から受付まで
- 「共に生きる」ことの本質を昆虫から学べ!昆虫と菌の共生を研究するラボを一棟丸ごと見学できちゃうツアー
- 研究体験ブース
- カフェピクニック
- メートル原器、上から見るか?横から見るか?メートル条約締結150年記念!ホンモノ(重要文化財)のオーラを浴びまくるツアー
- 帰路
- 研究者カード
入場から受付まで
10時からのラボツアー参加者は9時半から受付開始なので9時半ちょい前を目指しバスで産総研に向かう。


ラボツアー参加用のQRコードはメールで送信されるが入場用のQRコードは産総研特設サイト内のマイページに表示されるので事前にスクショして提示できるようにしておくのが望ましい。
共用講堂で入場受付をすると研究者漫画とガイドブックとアンケートの入った袋を渡される。その後2階に上がりラボツアーの受付をするとツアー番号の書かれているカードホルダーを渡される。ツアーごとに待機場所が違うのでよく確認したい。
こっから虫注意。
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「共に生きる」ことの本質を昆虫から学べ!昆虫と菌の共生を研究するラボを一棟丸ごと見学できちゃうツアー

実験用昆虫
先ず迎えてくれたのがシャーレに入った実験用昆虫15種程度と双眼顕微鏡であった。
チャバネアオカメムシと青色変異体
記者会見用バックパネルにも登場しているチャバネアオカメムシ

の眼点卵。

チャバネアオカメムシの青色変異体

の眼点卵。

玉子の色とチャバネが連動して青っぽくなっているのが面白い。
みんな大好きクロカタゾウムシ

こちらはおさわりできた。踏んでもつぶれないそうだ。日本野虫の会のとよさきせんせいによるとクロカタゾウムシは博物フェスなどで販売しており累代飼育も可能とのこと。
研究室



クロカタゾウムシ人参パーリィ。
古賀隆一研究員のチャバネアオカメムシの腸内共生菌研究

右手の個体は消化器官を引き出してある。胸部下に見える黄色が胃、そこから続くのが前腸、中腸、肛門手前の半透明の袋が後腸である。中腸にある膨らんだ部分にチャバネアオカメムシの共生菌が住んでいる。

今のところ哺乳類には共生と言えるほどの関係性のある細菌は見つかっていないようだが(無菌マウスが存在しうるので必須ではない)、昆虫にはその菌がいないと正常に成長できないほどの関係性を持つ菌が存在するそうだ。このチャバネアオカメムシの腸内共生菌は腸内に住処をもちメスは産卵時に肛門近くから分泌される共生菌入りの粘液を卵に塗り付け、また孵化した幼虫は最初に粘液を舐めとることで細菌を体内に取り込んでいるという。腸内共生菌を垂直感染させる手順が本能に組み込まれているのである。
アブラムシのブフネラに至っては体内に単独では生存できなくなった共生菌を内包する菌細胞をもち(もはやミトコンドリアや葉緑体である)、更に卵に菌細胞を内包することでメスの作業すら不要になっているという。すげぇな。
二橋亮研究員のトンボ研究
二橋亮研究員は北海道から帰ってきたばかりということでごじまんのリスアカネ生体を楽しそうに見せて下さった。

皆様ご存命。あっこうやって保管していいんですね。

とても楽しそうにイトミミズの給餌を見せて下さった。
何故トンボか? トンボは日差しに強い。その秘密は紫外線を反射するワックスを分泌しているからである。おまけにこのワックスは撥水性もあるそうだ。うーんバイオミミックサイコー。
柿沢茂行研究員のマイコプラズマのミニマルセルを使った研究と格安培地の開発
ラボツアー最後に迎えてくださったのは柿沢茂行研究員であった。共生細菌は昆虫の体内という極めて特殊な環境に生息しているため培養が極めて難しい。そのため最小限の生存機能のみを保持したマイコプラズマのミニマルセルに共生細菌を移すことで形質を発現させるというのがポピュラーな研究手法のようである。そのマイコプラズマノミニマルセルを培養するのにこれまでは血清を使わなくてはならなかったところお値段1/5程度の培養地の開発に成功したそうである。研究者にとっては福音であろう。共生菌もバイオミミックも大好きなのだが実はここで聞いた「全ての特質を奪われ最低限の生命維持機能のみを保持し移されたゲノムの生きた器となるミニマルセル」が一等面白かった。これを「個性を奪われた存在」とみるか、「可能性そのものの存在」とみるか?サイエンス・ノンフィクションがすぎる!

研究体験ブース
光応答ポリマー硬化実験
培養細胞を光で精密制御するための素材。電子ピペットでプレパラートにポリマーを滴下し紫外線を当ててぷにぷに感を楽しむ。

グリーンプラ(ポリカプロラクトン)型遊び
60度で柔らかくなるグリーンプラを型にはめてキーホルダーを作れる。生分解性があり水と二酸化炭素に分解されるため、美容整形の糸リフトにも使われているようだ。へー。
トライボロジー
摩擦があったりなかったりを体感できるコーナー。トライボロジーはそもそもギリシャ語のtribos(擦る)に由来するそうだ。


SUSはステンレス鋼、右はステンレス鋼にダイヤモンドライクカーボンという炭素膜でコーティングしたもの。摩擦が極めて少ない。炭素膜だというので鉛筆みたいなもんですかねと言ったらその通りだった。わーい。鉛筆で字が書けるのは極めて剥離しやすい炭素の膜が重なっていてそれが圧力をかけると紙に付着するからだよ!

左手がDLC,右手がベアリング。どちらも滑らかに回る。DLCの方が強度・耐久性があり大きな機械に仕込めるのこと。

液浸沸騰冷却

液浸沸騰冷却ってなんぞや? と思ったら、コンピュータの基盤を液体に突っ込み発生した熱をすべて沸騰に回して回収し効率的な冷却を測るものらしい。圧力をかけて気体から液体に戻すヒートポンプ方式、つまり冷蔵庫の熱交換と同じである。当然完全に絶縁できる液体でなくてはならない。以前は3M社のフロリナートというフッ素系不活性液体が使われていたがPFAS規制で生産中止、現在代替媒体を模索しつつ残り少ないフロリナートをやりくりしながら研究しているそうだ。産業に応用する際の「材料の安定供給」という課題がここにも!
ペロブスカイト太陽電池

市販のシリコン電池の1/10の重さ、エネルギー変換効率は同程度、塗布法で製造できるというマジでいいことづくめの太陽電池。大和ハウスなどが実証事業に参加しているそうだ。重くて廃棄しづらい現行の太陽電池となるはやで交代してほしい。
静電気を可視化するセラミックス材料
先日パソコンのメモリ増設でハラハラしたのでこれは凄い研究だと思った(小並感)。蛍光性をもつ物質を色々試していってたどり着いたのがSrAl2O4:Eu2+だそうだ。ただこちらセラミックスなので湿気に弱いとのこと。
他、
高野豆腐レンガ
コーナーで99%が空気のレンガで熱伝導率の低さを体感したり
リン循環
コーナーで試験紙でリン酸を検出したり
環境中エアロゾル
コーナーで空気清浄機の吹き出し口ではめっちゃエアロゾルが減少していることを確認したり
極薄ハプティック
コーナーででシリコンウエハースの上に層を重ねて行って最後にシリコンウエハースを削ることで作成する極薄振動膜を体感したり
メタンハイドレード
で液体窒素で冷却保管されていたメタンハイドレードを手に持ってガスが噴出する音を聞いたり青い炎を見たり
人工心臓
コーナーで血抜きした豚の心臓の弁膜や冠動脈の仕組みを水を入れて体感したり高血圧のおっかなさを実見したり
地震のしくみ
コーナーで筑波山の頂上にある安山岩に荷重をかけてひずみから破壊の過程を体感したりした。

カフェピクニック
お昼はカフェピクニックで神経を活性化させるタイしょうがを使ったチキンカレーを頂いた。
付け合わせが血液をサラサラにするブランドたまねぎ「サラサラレッド」を使ったコールスローである。
例の如くご飯は少なめにしてもらっている。

美味しかった!
メートル原器、上から見るか?横から見るか?メートル条約締結150年記念!ホンモノ(重要文化財)のオーラを浴びまくるツアー
ミーハーなので150周年とか言われると落ち着きがなくなるのである。準備のために度量衡の歴史も1/3くらいまで読んだぞ!(その後風邪ひいてダメになった)
メートル原器やキログラム原器を保管し、また現行の国家計量基準に関わる機関が産総研の計量標準総合センター(NMIJ)である。

最初にメートル条約や度量衡取締条例から計量法への歴史などの解説を伺い、

1966年製造、1980年頃まで使用されたキログラム原器用天びん類及びその使い方や

重要文化財のメートル原器や

天皇陛下に宛てたメートル原器校正証明書などを見ることができた。
商業と科学のために地球を基準とした計量単位を制定しようというフランスの大志、フランス革命による測量の難航などを思うと感動もひとしおである。アメリカのヤードポンド法は(以下略。
キログラム原器関連について穏やかに解説してくださった伊藤武先生、笑顔がめちゃめちゃかわいらしい白髪の男性なのだが研究者カードの趣味欄に「ムエタイ、柔術、戴拳道」とあって驚愕した。おまけに好きな作業が計量法の政省令の改正作業って無敵か。
帰路
帰りは産総研がつくばセンターまで無料シャトルバスを運行してくれた。ガイドブックに時刻表が記載されている。
研究者カード
13枚を得た。中々なモンだと思う。