即興厨房

大船市場で野菜を大量に買い込んでええ感じのお総菜を一週間分作ってはブログに記録する人です。器は骨董屋でこつこつ集めたぐい飲みやお猪口です。美術展、本、たまの旅行も記事にします。好きな動物はチー付与のどんぐりです。

横浜ミネラルマルシェ、IMT特別展『極楽鳥』とレクチャー『発色のメカニズム:鳥の羽と貴石』抄録、Depotの東京ナポリタンとプリン

横浜ミネラルマルシェ

そろそろ目新しい石に会いたくなったので、横浜ミネラルマルシェに行ってきた。恒例の高島屋ローズホール、大体100社くらいの出展である。

東洋ルースさんで0.39ktの八面体ダイヤモンド原石

同じく東洋ルースさんで2.64ctのレインボームーンストーン

アニ・ダイヤモンドさんで10箱1000円のジェムバイキング

ジョナサンさんでアルゼンチン産ピンクアメジスト

微量のウランを含み紫外線で蛍光を示す玉滴石(写真ではあの鮮やかな蛍光黄緑がなぜか捉えられないのだが露草色の部分がそれである)

ちなみにうちにあるウラン硝子で一番えぐい蛍光を示すものがこちらになります。

他、探金屋さんでウランおはじきとカドミウムおはじきを買ったり

エディオックさんで始新世の瑪瑙化した腹足類の化石(モロッコ産)を買うなどした。

 

晩御飯に備えて昼は控える。

SHIGERU KITCHENのつくねたれバーガー。非常に肉肉しくて満足度が高い。たれは辛め。バンズの粒々が非常に香ばしくこくがありうまかった。かもめパンのくるみ胚芽を使ったバンズとのこと。

IMT特別展『極楽鳥』レクチャー『発色のメカニズム:鳥の羽と貴石』抄録

そのまま東京駅KITTEのインターメディアテクに向かった。本日16時から『極楽鳥展を巡って』のレクチャー「発色のメカニズム:鳥の羽と貴石」が開講されるので行列具合を確認しようと思ったのである。

到着は1時間15分前の14時45分。既に人が並んでいる。会場は小規模でせいぜい50人収容。洒落にならん。学芸員さんには同行者が来てからの参列をお願いされる。ああー。

一緒に聴講予定であったお嬢さんには次第をメールし詫びる。ぎりぎりにならないと来れないそうで、レクチャーは諦めて展示だけ見ます、適宜合流してご飯をご一緒しましょうとの申し出。

ありがたい。

そうこうしているうちに15時10分で行列も締め切られ、あまりに暇なので鯨の脊椎や犬の頭骨や馬の前足をスケッチするなどして過ごす。

レクチャーは宝石学者エレナ=キャロライン・ボネティさんによる宝石の色の仕組みの解説と東京大学総合研究博物館特任准教授による鳥の羽の色の仕組みの解説である。

もともとのテーマは『鳥の羽を特徴づける色のメカニズム、そしてそれを貴石においてどう表現するか』というものだったが、どうも講師が変わった関係か「鳥の羽を貴石に於いてどう表現するか」については触れられることがなかった。しかしながら諸々大変面白かったのでレクチャー後の質疑応答部分も併せ要点を箇条書きで記録しておく。

【宝石学者エレナ=キャロライン・ボネティさん編】

  • ヒトの目で認識できるのは三原色。物体表面の構造や光そのものの組成が見え方に影響する。
  • 宝石を鑑定する環境の基準はフランス宝石学会(Laboratoire Francais de Gemmologie)が定めている。標準光源装置マクベスジャッジIIはダイヤモンド取引の盛んだったアントワープの曇りの日の昼光色を基準に6500Kの色温度の光で鑑定する仕様となっている。
  • 宝石のグレーディングには歴史や経験などが影響する。客観的な尺度として色についてはマンセル色相環が採用される。しかし合成や放射線照射などで様々な新しい宝石がつくられたとしても歴史には勝てん。天然物のコーンブルーやピジョンブラッドなどが尊ばれる。
  • 宝石の色は、もともとの物質の組成として色を備えている場合と、組成の一部が別の物質に置換されたことによって色が着く場合の二種類がある。無色透明のコランダムの一部が置換されて色が着く宝石としてはサファイヤやルビーが該当する。一方で放射線を照射して結晶構造に欠陥を起こすことにより発色する宝石には透明なトパーズを中性子線で処理したロンドンブルートパーズなどがある。質疑応答では天然放射線の強い地域には色の付いた石が産出されやすいのかという問いが出され、それに対しビルマミャンマーに色石が良く産出することは天然放射線の強さが影響しているかもしれませんという回答がなされていたが、例として出されたルビー、エメラルドの着色は格子構造の欠陥ではなく別の元素との置換によって起きているものなので、あまり適切な回答ではなかったのではないかと思う。(参考:無機材料への電子線照射その2 ~宝石への応用~ | 電子線のNHVコーポレーションエメラルドの品質を決定する要因 (gia.edu)
  • カラーチェンジは光に含まれる波長と宝石が吸収する光の波長の差分によっておこる。
  • インクルージョンによって着色する宝石の代表例:アベンチュリン。
  • 他物理的な要因として、真珠の干渉色、回折、シリカ粒子が不規則に並んでいることにより起こるオパールの遊色など。

東京大学総合研究博物館特任准教授編】

  • 始祖鳥は今羽根をもっている生物が鳥しかいないことから発見当初は鳥の祖先扱いされていたがその後の研究により羽根を持っていた生物は鳥以外にもいたことがわかり鳥の始祖という立ち位置から外れた。
  • 羽根は羽軸に羽枝が付きそこにさらに小羽枝が付いている。小羽枝には鍵構造がありすぐに外れるが振れば元のように引っかかる。よくできてるなー。
  • 鳥が作れる色素の基本は黒から灰色のユーメラニンと茶色のフュオメラニン。種によってはオレンジのカロテン、黄色のキサントフィル。青は構造色だがその下には必ずメラニン層があり、メラニンが薄いと薄い青、濃いと濃い青に見える。構造色の例として、モルフォ蝶、タマムシ、ブラックオパールムーンストーン、ニジキジなどがある。メキシコのケツアルは青い色素を合成できる唯一の鳥である。合成過程は研究中。
  • 美しく輝く構造色の羽を持つ鳥は宝石に準えた名前を付けられることがある。Cuban Emerald、Brazillian ruby翡翠など。
  • 鳥は4種類の錐体細胞を持っており紫外線を見ることができる。ヒトにとっての可視光線が380nm~760nmのところ、鳥は330nmから700nmである。しかし人も鳥の種を見分けられることから、見えている世界はそれほど違っていない可能性がある。一方で、紫外線によってのみ見えるようになる模様などは鳥においては観察されていない。
  • フラミンゴの体色は甲殻類のカロチノイドに由来する。色が濃いことにより餌をがっつり食べられる健康で強い自分をメスにアピールできる。フラミンゴにおいてピンクはモテ色。
  • ラケットヨタカのハンディキャップ仮説。不利なもん備えて生きてるからタフだぜアピール。
  • トキは繁殖期に自分の首から零れ落ちるメラニンを体中に擦り付けて化粧をする鳥である。余りに黒くなるためセグロトキという別種と分類されていたほどである。身なりに気を使う余裕のある俺イケてるアピール。
  • 伊豆シャボテン公園の孔雀群で羽根の長さや対称性や目玉の数などがメスの選好性に影響しているかの詳細な研究がなされたが一番モテに影響していたのは鳴き声の長さであった。もともと孔雀は鳴き声でもメスにアピールする生物であること、閉鎖された環境で羽根の特徴が固定されたために鳴き声が重要視されるようになった可能性がなくはない。また鳥類(ヒトもですが)は「ほかのメスが選んでいたオスなら間違いない」という論法で繁殖相手を選ぶ場合があるため選好性におけるトレンドが発生しうる。
  • アオアズマヤドリは自然界に稀な青いものを巣の周りに並べる習性があるが人間が出す青いゴミのせいで折角の巣がゴミ屋敷のような残念なことになっている。
  • そのアオアズマヤドリの近縁種のオオニワシドリは白いものを集めた中に赤いものを差し色にし、さらに大きいものを奥、小さいものを手前に置いて正面から見たとき赤い色のものが皆同じ大きさに見えるよう遠近法を用いて並べる習性がある。ある研究者が遠近法にそぐわないとて赤いものの位置を変更したところオオニワシドリが元の場所に置きなおしたという観察例が報告されている。美意識があるのか?というキワキワ事例。

通訳なしで英語のレクチャーを理解できた!やった!日ごろの鍛錬の成果だ!最初gemstoneがJacksonに聞こえて困惑したのは内緒だ。誰?

IMT特別展『極楽鳥』出品物写真

終わったところでお嬢さんと一瞬合流、閉館時刻に入り口で再会を約束して一旦解散する。趣味が近しいとこういうところが話が早くて助かる。

というわけでここからはお楽しみタイム、19世紀から20世紀に制作された鳥をモチーフにした宝飾品の展示物と、平素は収蔵展示室に居鎮まっているオオフウチョウの剥製の写真を御覧じろ。

白鳥のリバースインタリオブローチ 作者未詳(英国製)/1860-70年以降/ゴールド、ロック・クリスタル、マザーオブパール/アルビオンアート・コレクション

ボアヴァン(Boivin)、ニワトリのブローチ 1950/イエローゴールド、ルビー、エメラルド、サファイア、オニキス/個人蔵

ひよこと卵のブローチ 作者未詳(英国製)/1888年/ゴールド、シルバー、エナメル、ダイヤモンド、ルビー/アルビオンアート・コレクション

モーブッサン(Mauboussin)、鳥のブローチ 年代未詳/プラチナ、イエローゴールド、ダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルド、ターコイズ/個人蔵

ヴァン・クリーフ&アーペル(Van Cleef & Arpels)、鷲のクリップ 1972年/イエローゴールド、ホワイトゴールド、ローズゴールド、マラカイト、オニキス、コーラル、マザーオブパール、ダイヤモンド/ヴァン・クリーフ&アーベル所蔵

ヴァン・クリーフ&アーペル(Van Cleef & Arpels)、鷲のクリップ 1972年/イエローゴールド、ホワイトゴールド、ローズゴールド、マラカイト、オニキス、コーラル、マザーオブパール、ダイヤモンド/ヴァン・クリーフ&アーペル所蔵

ドードーのブローチ 作者未詳/19世紀後半/ゴールド、シルバー、ダイヤモンド、エメラルド、ルビー、パール/個人蔵

ショーメ(Chaumet)、鳥のブローチ 19世紀/ゴールド、シルバー、ダイヤモンド、ルビー、エメラルド/個人蔵

鳥のブローチ 作者未詳/19世紀/トランブラン仕掛け、金に銀、ダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルド/個人蔵

ツバメのブローチ 作者未詳/19世紀/金に銀、ダイヤモンド、グレーエナメル、ルビー/個人蔵

ヴァン・クリーフ&アーペル(Van Cleef & Arpels)、鳥のクリップ

1968年/イエローゴールド、サファイア/ヴァン・クリーフ&アーペル所蔵

カルティエCartier)、フラミンゴのブローチ 1987年/プラチナ、イエローゴールド、ダイヤモンド、エメラルド、サファイア、ルビー/個人蔵

ギュスターヴ・ボーグラン(Gustave Baugrand)、孔雀のブローチ 1890年頃/ゴールド、パール、ダイヤモンド、ルビー、サファイアオパール/個人蔵

シャルル・メレリオ(Charles Mellerio)、孔雀のブローチ 1910年頃/プラチナ、ダイヤモンド、エナメル、オニキス/個人蔵

ヴァン・クリーフ&アーペル(Van Cleef & Arpels)、鳥のブローチ 1920年代/プラチナ、ダイヤモンド、エメラルド、オニキス、鳥の羽/個人蔵

モーブッサン(Mauboussin)、カケスノブローチ 1959年頃/プラチナ、ゴールド、ダイヤモンド、エメラルド、ルビー、サファイア/個人蔵

ピエール・ステルレ(Pierre Sterlé)『鳥のブローチ』写真

さてここからはピエール・ステルレ(Pierre Sterlé)である。

鳥のイメージを極端に様式化し、同年代の前衛美術に呼応しながら突出した造形のジュエリーを発表したのがピエール・ステルレ(1905-1978年)である。彫刻そして航空工学から造型的なヒントを得つつ技法の実験を重ねて製作されたステルレの鳥のブローチは、我々に通ずる現代的なジュエリーの道を切り開いた。(展示ガイドより)

名称は全て『鳥のブローチ』である。

年代未詳/プラチナ、イエローゴールド、ダイヤモンド、グリーンサファイア/個人蔵

年代未詳/プラチナ、イエローゴールド、ダイヤモンド、エメラルド/個人蔵

年代未詳/プラチナ、イエローゴールドダイヤモンド、マザーオブパール、トルマリン(ルベライト)/個人蔵

プラチナ、イエローゴールド、ダイヤモンド、バロックパール/個人蔵

年代未詳/プラチナ、イエローゴールド、パール、ダイヤモンド、ルビー、トルマリン(ルベライト)/個人蔵

年代未詳/プラチナ、イエローゴールド、ダイヤモンド、マザーオブパール、トルマリン(ルベライト)/個人蔵

年代未詳/イエローゴールド、ホワイトゴールド、ラブラドライト、ダイヤモンド、/個人蔵

年代未詳/イエローゴールド、ホワイトゴールド、シトリン、ダイヤモンド/個人蔵

年代未詳/プラチナ、イエローゴールド、アクアマリン、ダイヤモンド、サファイア/個人蔵

それから最後にこの展覧会の名称でもあるオオフウチョウを。

 

そのあとお嬢さんと東京駅のDepotで東京ナポリタンと懐かしほろ苦プリンを頂いた。どちらも大変美味しかった。ほろ苦プリンはカラメルから珈琲の気配がした。

 

今日もよい休日であった。