即興厨房

大船市場で野菜を大量に買い込んでええ感じのお総菜を一週間分作ってはブログに記録する人です。器は骨董屋でこつこつ集めたぐい飲みやお猪口です。美術展、本、たまの旅行も記事にします。好きな動物はチー付与のどんぐりです。

2023年3月6日鎌倉散歩、またはおもしろ屋、CAFE ETHICA、源平池のユリカモメの足の色、大巧寺の氷室雪月花のこと

鶴岡八幡宮が正月になると手水のあたりで液晶掲示板に自社の宣伝を流すようになった。それが嫌で今年は初詣をさぼりにさぼっていたのだが、いい加減例年貰っている刀守がないことに不安を覚え詣でることにした。なんと今年の初鎌倉である。隣の駅に住んでいるのによくもまぁここまで繰り延べにしたものだ。

 

(ほんとうのことをいうと、ジラソーレのいない鎌倉に行くのがさみしかったのだ)

 

というわけで今回のミッションは

  • 鎌倉八幡宮で刀守を授かる
  • アジア商会でハーブを更新する
  • 散髪の予約までに逗子に帰る

以上である。

 

月曜定休なのを忘れて游古洞に向かったが、踏切の手前で閉まっているのが見えたので引き返すことにした。ところでその踏切の手前にほんの数坪の店がある。大体一週間くらいのスパンでハンドクラフト系の店が入れ替わるという業態の田口商会で、本日は着物のリサイクルショップおもしろ屋。狭い間口に品物がずらりと並んでいる。

かわいらしい端切れを売っていたので一束買った。会計の間に小物なぞを眺めていると、ガラス戸の右手に何か細長いものがぶら下がっているのが見えた。下ろして見せてもらう。こちら着物地のスヌードだという。しかも一本1000円。なかなかの値頃さである。ちょうど今朝の気温に相応しい襟巻に困っていたところだったので一本もらうことにした。

地紋は銀鼠に利休鼠の観世水、そこに籠盛りの筍を描いた色紙と蓑笠姿の老人を描いた色紙が散らしてある。渋くてよい。絹だが手洗いでよいそうだ。店の主人に首に巻いたのを整えてもらい、お似合いとのお褒めの言葉までいただいてようよう店を後にした。

幸先がいい。

 

それから空腹を大事に抱えながら散歩した。鎌倉に来るたび、今度来たときはここで食べようと思っていた店が小町通りにあったのだ。しかしどのあたりにあったかはよく覚えていない。宛てがないのかあるのかわからないままランチ提供の刻限に近づいていくのに耐えかねて、珈琲は口に合わないが雰囲気が頗るよろしいミルクホールにしようかと近道に入る。

よそさまのお宅だが塀と引き戸がただごとではないので撮った。

店頭の献立を見てミルクホールはやはり気が向かずそのまま小町通りをつらつら歩いた。パスタの店やらプリンの店やらに気をひかれながら、どうももう少し先にあったような気がして、少し、もう少し。

CAFE ETHICA。

君だったか。

階段を上がると先客はカウンターに一人。音楽はジャズ。カウンターの奥にはとりどりの酒。向いには一面の本棚。

どうもこちらの店もただごとではなさそうだ。

キッシュロレーヌとトウモロコシのスープのランチプレートに生姜レモンティー1500円を頼んでから、店内の写真を撮ってよいか伺った。許可が出たので本棚を撮らせていただいた。

こりゃあ今日はいい。とても、とてもついている。

生姜レモンティーはとても案配が良い。何がというと甘くないのだ。偽りなく尖った生姜の下に柔らかいレモンの酸味。濃くはないのに物足りる味。

コーンスープはあえて粒を砕ききらずそれでいて十分に滑らかである。

こんな分量で足りるのか、ことりさんのおやつではないかと謗られそうだが、いやいやそんなことはない、このくらいでちょうどいい。キャロット・ラぺはレモンの皮と合わせた上にクミンで風味をつけてある。生ハムの下にはこう見えて八つ切りの苺が二かけ潜んでいる。チーズはカマンベール。かかっているのはバルサミコ酢。キッシュに入っているのはパンチェッタさんじゃないかなぁ。フォカッチャがまたしみじみとうまい。

一番奥の席の窓からは鎌倉の住宅街を臨むことができる。ベランダに何かのシートが積みあがっているのが少しばかり興ざめだが、それでも窓辺から見えるとりどりの屋根は美しく、そして古書好きの心臓をわしづかみにしてくる本のセレクトにはたまらないものがあった。

会計の際、ベストを着こんだ店主に、夜ノンアルでもいられるかを聞いたところ、大丈夫とのことだった。

またいつか夜に来よう。

 

それから鶴岡八幡宮に行った。日によく当たる桜はもう満開だった。

お参りを済ませて刀守を無事授かった。おみくじが恋愛関係と鳩みくじのみとなっており、どちらも別に用はなかったので引かなかった。

白旗神社のあたりに真新しい盛り土が見えたので行ってみると実朝桜であった。調べたところ小ぶりの八重らしい。見ごろは4月上旬から中旬とのこと。

源平池を見たらカモ科がほとんどおらずカモメ属が多勢となっていた。長年鎌倉に通っておりながら実のところあまり見たことのない光景だったのでしみじみ観察する気になり藤棚の下の長椅子に腰かけた。餌を撒く人が来れば慌ただしく参集する、そうでなければ気ままに散ずる。そんな様子を見ているうちに、趾が橙のと紅のとがいるのに気づいた。Google先生によるとどちらもユリカモメだという。ではなぜ趾の色が違うのか。

こぎつねさんぽにでかけようのkitunetさんが大阪市立自然史博物館和田先生から得た回答によると、あんよが黄色いのは幼鳥、赤いのが成鳥とのことであった。君たち子供の頃は三列風切に柄があるのか。嘴が黄色いとはよく言ったものだ。

 

それから大巧寺へ。

氷室雪月花。

一等好きな椿に間に合った。

 

それからアジア商会に行ってパセリとバジルとローズマリーとタイムを買った。セージは買わなかった。

 

他、線路沿いにTUZURUというよさそうな文具屋を見つけたり、紛失に備えて帽子屋で黒のハンチングを買ったり、スーパージェムス鎌倉店の店員のお嬢さんと宝石展の話で盛り上がった挙句インターメディアテクの極楽鳥展のレクチャーにナンパしたり、もう一度おもしろ屋に行って差し上げものの薔薇柄絞りのスヌードを買うなどした。

 

出がけにマンションの駐車場で伐採された蕾の膨らんだ枝を見つけ、あまりに不憫だったので何本かを引き取って活けたのはまた別のお話。

 

良い休日であった。