即興厨房

大船市場で野菜を大量に買い込んでええ感じのお総菜を一週間分作ってはブログに記録する人です。器は骨董屋でこつこつ集めたぐい飲みやお猪口です。美術展、本、たまの旅行も記事にします。好きな動物はチー付与のどんぐりです。

【2022年2月23日~25日】草津温泉日新館のこと【草津温泉湯めぐりの旅】

草津の宿選びの基準は、第一に歴史のある宿であった。

古くからある温泉地なんだから、施設が真新しくてもなんだか居心地が悪い。

次に値ごろ感。

温泉街の中心部にあって、どこにいくにもアクセスがいい。

後はそもそもではあるが一人で泊まれるとこ。

そんな基準で選んだ日新館さん、大変居心地がよかったのでご紹介したい。

 

草津温泉の湯畑を下って湯滝を過ぎてすぐ、ぐーてらいぜという喫茶店の奥に日新館がある。ちなみにぐーてらいぜは日新館さん運営の喫茶店である。

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日新館

建物からは昭和のスキー客を意識したモダンな機能美が伺える。

素泊まり一泊1万1000円。部屋は八畳。どんな部屋かと思っていたら。

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日新館 客室

これですよ!これこれ!わかりますか性癖にブッ刺さるこの感じ!すみのちんまりした鏡台とか、旅館の居心地の良い謎空間こと「広縁」とか、紫の座布団とか、もうサイコーですよ!

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日新館 広縁

このね、古い宿ならではのいい椅子!これどこの木工所のかわかんないけど絶対いい椅子ですよ!座り心地めっちゃよかったですもん!

茶櫃の中はこんなです。

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日新館 茶櫃

もうこの茶たくとかめっちゃ好き。茶筒には旨味があるのに長時間滲出しても渋くならないええ感じの茶葉のティーバッグがみっちり詰めてあって不足するということがない。

部屋には湯沸かしポットがなく保温ポットだけだが廊下には熱湯を満たした交換用の保温ポットが置いてある。

初日おやつはやまびこ温泉まんじゅう草津せんべい本舗のごませんべい。

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日新館初日おやつ やまびこ温泉まんじゅう、ごませんべい

ちな二日目のおやつは笹乃屋さんの草津もち2つ。餅であんを包みきなこを振って笹で包んだものでこちらもうまい。写真撮り忘れた。

建物にやたら階段が多くてちょっとすると帰り道に迷いそうな作りなところもぐっとくる。

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日新館 避難経路図

なお、客室入ってすぐ左手に洗面台と冷凍なしの冷蔵庫、食器棚があり、右手にトイレがある。鍵は撮り忘れたが風呂屋の下足箱の鍵みたいにでかい木板がついている。酔客でも無くしようがなさそうだ。

風呂がまたよかった。

といって脱衣所も風呂場も特別なところがあるわけじゃないんだが、女性風呂の浴槽は高温と中温の二種類あり、この高温の湯船が自分にはちょうどよかったのである。源泉は湯畑から引いているとのこと、泉質なんて草津なんだからいいに決まってるじゃないですかやだー。

この手の宿につきものの館内展示。

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日新館館内展示

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日新館館内展示

旅館名入りのつまようじというのは初めて見た。

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日新館館内展示

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日新館館内展示

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日新館館内展示

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日新館館内展示

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日新館館内展示

この手の宿に必ずある実家っぽい本棚。

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日新館本棚

とろける鉄工所が5巻まであったので拝読しました。

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日新館蔵書 とろける鉄工所

他館内には、

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代田収一画『草津温泉 日新館』

代田収一画『草津温泉 日新館』や

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中村不折書『青山白雲』

中村不折の書がある。

他の所蔵品は「日新館ぎゃらりぃ」をご参照いただきたい。

 

というわけで、新しすぎず古すぎず奇をてらわずただ堅実な「ええ感じの昭和」を味わえる日新館のご紹介でした。

 

以下はおまけ

 

結局日新館のはじまりは700年前なのか300年前なのか調べてみようコーナー。

 

日新館の公式サイトには300年以上前から営業していたとある。

当館は、草津温泉のシンボル・湯畑のすぐ下という絶好の地で、300年以上前より『宿 湯本安兵衛』という名で営業しておりました。当時は湯畑からの直接湯を引いて使用することのできた数少ない宿のひとつでした。多くの著名人が利用しました。

 

宿の案内には、湯本の姓と三ヶ月家紋は源頼朝から賜ったものであるとの記述がある。

当日新館は、その昔、源頼朝公より湯本の姓と、三ヶ月の家紋を賜り統治の草分けとして代々この地の湯森などの重役を務めつつ湯宿を営んでまりいまして、草津では最も古い歴史を持っている宿でございます。

(客室備え付けの宿の案内より)

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日新館ごあいさつ

館内に展示されていた旅行パンフレットか何かの裏の広告には、湯本の姓は建久年間に遡るとの記載がある。

日新館は

その祖先遠く建久(七百七十餘年前)の昔より此地に在って湯宿を営み湯本の姓は頼朝公より賜ったと云ふ事が古書にも残って居り兎に角この地の草分けで統治草津とは共に歴史的にも知られています。

(館内展示物より)

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日新館館内展示物

 

十返舎一九『上州草津道中膝栗毛』1820年

上毛の國草津は、むかし養老年中、行基菩薩の開き給ふ溫泉とかや。 まことに海内無双の靈湯にして、諸病に驗あること、普く人の知るところなれば、遠近の旅客ここに 入つどひて、宿湯の繁昌いふばかりなく、中にも湯本安兵衞、黑岩忠右衞門など、ことに家居花麗を盡し、風流の貴客絶ず。

(十返舍一九. 上州草津温泉道中膝栗毛: 膝栗毛全集九 (夕陽亭文庫) (Kindle の位置No.1628-1657). Sekiyoutei. Kindle 版.) 

文中の「湯本安兵衛」が日新館の前身であるとのこと。

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上州草津道中膝栗毛 日新館館内掲示
国学者堀秀成『草津繁盛記』慶応年間

草津の湯宿には大家というものが十一戸あり、古宿というのは数が多い。大家というのは、この村が始まった時からの家筋で、村においても勢力がある。そのうちで山本十右衛門、湯本平兵衛、湯本安兵衛、黒岩忠蔵などは冠たるものでこれらの宿はすべて部屋数を百余り持って…。

(館内掲示より)

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草津繁盛記 日新館館内掲示

日新館のはじまりを湯本姓を賜った770年前と数えているのか300年前としているのか、300年前とすれば何に拠るのかを調べようとしたが挫折したのでここに記録する。

 

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