ミッドサマーを鑑賞した。
まぁ、日本には諸星大二郎先生がいらっしゃるので…。
諸星大二郎展はサイコーであった。
諸星大二郎先生の漫画は、異界を扱うというその特質上、通常のコマ運びから突然膨大な空間が展開することになることが多いのだが、常にしてそのコマ運びと空間の描き方がすさまじい。
今回の展示で特に印象深かったのは、闇の客人の鬼踊り、鬼を導きながら老人が鳥居を潜って此岸から彼岸に至る場面の原画であった。
異界の膨大な空間空気感、見たことがないはずなのになぜか鮮烈に想起できる此岸の夕暮れの色、沈殿したような時間の進み方、その先に予感される老人の途方もない孤独まで、何故ペンと紙だけであそこまで表現できるのか。
勿論みんな大好きマッドメンでページをめくったらクマさんがアエンに頭かじられちゃっているシーンや、神話の繰り返しの中に閉ざされることを拒んだコドワ(とナミ)に置いてかれた大いなる仮面が「戻ってこい コドワ…… いや カウナギ」と嘆くシーンや、妖怪ハンターのあんとく様顕現シーンや、生命の木のじゅすへるたち昇天のシーン、これら印象的な諸星大二郎の突然展開する膨大な異空間は、原画で見るとなお味わい深く鬼気迫るものであった。
そんなわけで、諸星大二郎履修の上でミッドサマーを見ると、「なんだお前、土着信仰は初めてか? 力抜けよ」というような気持ちになってしまうのである。
おまけ:公式による解説